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魔術師の塔の1階を探索する冒険者たちは、かつて食堂であったらしい部屋(A)を、手分けして探索する。
アイオライトは食堂に残されているテーブルを、アルセーヌは階段前の通路に出る扉を調べた。
そんな中、部屋(B)につながるドアを開けたレイスは、かつて厨房であったらしいその部屋で、ネズミの死骸をむさぼる1匹のゴブリンと目が合ってしまった!
【レイス】 騒がれる前に、やっときますか。
【アイオライト】 邪悪な。
【GM】 お互いに相手の存在に気づいてるので、不意討ちはなしね。敏捷度はレイスが上です。
【レイス】 じゃあ、行きまーす。(ころっ)はずれ。
【GM】 突然のレイスの侵入と攻撃に驚いたゴブリンは、反撃せずに両手を上げて戦意がないことを示す。ただ、彼が何を言ってるのかはわからない。
【アイオライト】 で、次のラウンドになるの?
【GM】 そうやね。
【レイス】 とりあえず、ふたりを呼ぶ。
【アイオライト】 じゃあ、ドアを閉めて、この部屋から出て行くことを提案しますが。
【レイス】 殺さないにしても、縛って猿轡ぐらい噛ませて、騒がれんようにしてから出て行きたいけど。
【アルセーヌ】 なるほどな。僕はその意見に賛成するよ。
【レイス】 じゃあ、ロープを手頃な長さに切って手と足を縛って、布きれを猿轡にする。
【GM】 3人の人間に取り囲まれてるゴブリンは、為す術なく虜となりました。
【アイオライト】 では、ドアは開けて行こうか。
【アルセーヌ】 ドアを閉めとかんと、声が外に漏れるかも知らんで。
【アイオライト】 閉めてっちゃうと、このゴブリン、逃げれなくなるし。
【アルセーヌ】 そこまでゴブリンを思いやるんや(笑)。
【レイス】 とりあえずこの場はドアを閉めて行って、帰りにでも放してあげましょう。
【アイオライト】 そういうことならば。
【アルセーヌ】 絶対、忘れるわ。
【アイオライト】 ……ここにゴブリンがいる、とメモしとこうかな。
【GM】 村に帰ってから、そのメモの存在を思い出すんやろ(笑)。
【レイス】 「あっ!?」って(笑)。
2階に上がった冒険者たちは、部屋(H)に入り、部屋の片隅床に、刃先を上にして立ち並ぶ8本のロング・スピアを見つけた。
【アイオライト】 槍の手入れの具合は?
【GM】 んー、もう錆びかけてる。
【アイオライト】 それなら、いらんな。
【アルセーヌ】 いちおう、それを破壊しておこうか。
【アイオライト】 ベシベシと折っていくのね。
【アルセーヌ】 折るでもいいし、とりあえず使い物にならんように。
【アイオライト】 バルコニーから外へ放り投げとけば?
【アルセーヌ】 じゃあ、バルコニーから、誰がいちばん遠くへ投げれるか競争しよか(笑)。
【GM】 そうしようと思って槍に手をかけてみたら、どうやらそれは床にしっかりと固定されてるらしことがわかった。
【レイス】 あら?
【アイオライト】 床に固定されてる槍、ってどんなん?? 想像できへんねんけど。
【GM】 床にじゃっかん深めの穴が穿たれてて、そこに差し込まれてる感じ。
【アルセーヌ】 飾りかな。引っ張っても抜けそうにない?
【GM】 筋力で判定してみよか。冒険者レベルと筋力ボーナスで、目標値8ね。
【アルセーヌ】 やってみるか。(ころっ)惜しい、あと1つやった。抜けない。
【アイオライト】 横からちょっかいを出してみようかな。(ころっ)出た。
【GM】 じゃあ、1本の槍がガリっと抜けた。
【アイオライト】 これって、1本ずつ判定するの?
【GM】 アイオライトはすでに成功したから、もういいや。アルセーヌはレベルが上がるまで再挑戦不可(笑)。
【アルセーヌ】 なんてこったい。自信喪失して、アイオに任せとくよ。
【アイオライト】 「1本〜、2本〜」と抜いてく。
【レイス】 「楽しそうやなぁ」って見とく。
【アイオライト】 やる?(笑)
【レイス】 「いいッスか? じゃあ、1本抜こうっと」(笑) (ころっ)抜けた。
【GM】 じゃあ、アイオライトとレイスは、そうやって8本のロング・スピアを全部床から抜き取ったよ。
……で、どうすんの、それ?
【アイオライト】 当初の予定通りに、外に捨てる。ロープで縛って、まとめてバルコニーから投げ捨てよう。
【GM】 では、8本の槍の束は、がちゃん! と地面に落ちました。
【アルセーヌ】 じゃあ、この部屋は捨て置いて、他の場所を探索しよう。
2階の探索を負えた冒険者たちは、3階へ上がった。
そして、アルセーヌとアイオライトが、部屋(K)を探索するために中に入った。
【GM】 部屋(K)の壁には、ぽっかりと大きな穴が開いていて、隣の空間に繋がっているようやね。
【アルセーヌ】 部屋(J)かな。
【レイス】 廊下から部屋(J)に行って、確かめてみる。
【GM】 なら、部屋(K)のドアの横を通り過ぎたところで、床がぱくっと口を開けるよ。
【レイス】 あっ。
【GM】 レイスは一瞬、空中で「ん?」という顔をした後、思い出したように下に落ちた。
3メートルぐらい落ちたので、ダメージは9点。鎧で止められるよ。
【レイス】 (ころっ)4点止まった。5点くるか……戦闘のダメージも合わせて、生命力の残りが半分になってしまった。
落ちたとこは、どんな感じ?
【GM】 外にバルコニーがある部屋みたいやね。レイスが尻をさすっているその場所の床には、何かが差し込まれてたような小さな穴が8つばかり穿たれてるよ。
【レイス】 そうなの。部屋(H)か。
【アルセーヌ】 なるほど。
【GM】 スピアを引っこ抜いてなかったら、キミは槍の上に落ちて、もっとひどいダメージを受けてたね。
【アイオライト】 あ〜、なるほど! ……スピア、捨ててよかったね。
【レイス】 やばかった(笑)。
【アイオライト】 ところで、私たちはレイスがいなくなったことに気づくだろうか。
【アルセーヌ】 とりあえず、部屋(K)の壁の穴から部屋(J)に行って、ドアをから顔を覗かせて廊下の様子を見てみるよ。
【アイオライト】 私は部屋(K)のドアから顔を覗かせる。
【GM】 なら、アイオライトには、隣のドアからアルセーヌが顔を出してるのが見える。
【アルセーヌ】 これで、部屋(K)と部屋(J)が壁の穴で繋がってることが確認できた。
【アイオライト】 で、レイスがいないことに気づくわけね。
【GM】 廊下の落とし穴は跳ね上げ蓋みたいなので、ふたりが廊下を見たときには、ただそこにレイスの姿が見えないだけやね。どこに行ったかはわからない。
【アルセーヌ】 「おや、レイスはどこに行ったんや?」
【アイオライト】 「レイス〜!」って呼んでみよか。
【レイス】 尻をさすりながら、階段を上がって行く。「いってぇ〜」って言いながら。
【GM】 じゃあ、そんな感じでレイスがやって来た。
【アイオライト】 「どこに行っとったん?」って聞く。
【レイス】 「落とし罠がそこに。ほら」って、スピアでその部分をつんつんする。
【GM】 そしたら、床がぱっくんぱっくん。
【アルセーヌ】 「おおう、危うく落ちるところやった」
【アイオライト】 とりあえず、傷を治してあげましょう。〈キュアー・ウーンズ〉、(ころっ)6点治った。
【レイス】 ほぼ全快。
【アルセーヌ】 じゃあ、みんな、部屋(K)の壁の穴を使って迂回して進もう。
【アイオライト】 これって、このために開けられた穴なのかなぁ。
【レイス】 ……ん?? この3階って、小さいな?
【アイオライト】 そういえば、ちょっと狭いよね。もっと左側に何かありそうな気がするけど。
【レイス】 部屋(K)と部屋(J)の左側の壁って、石造り?
【GM】 石材で造られた壁やね。
【アイオライト】 壁をたんたん叩いてまわりましょか、みんなで。
【レイス】 音を確かめるんやな。
【GM】 ただ、それをやって何かを知ることが可能なのは、シーフやね。つまり、アルセーヌだけ。
【アルセーヌ】 頑張るで。(ころっ)
【GM】 なかなか優秀な達成値やね。そしたら、壁の向こうにまだ空間があるような気がした。
【アイオライト】 どうやって壁を壊すかだね。
【GM】 石壁ですぜ。
【アルセーヌ】 どこか、動いたような形跡とかはないわけ? 隠し扉とか。
【GM】 じゃあ、シーフ技能で[捜索]をしてみよか。
【アルセーヌ】 (ころっ)
【GM】 とくにそういうのは見つからないね。
【アイオライト】 上の階に、向こうの空洞へ降りるところがあるのかも知れん。
【レイス】 それっぽいな。とりあえず、上に行きましょう。
冒険者たちは4階へ上がり、部屋(M)で魔力14点の魔晶石を1個入手したりしながら、部屋(O)の扉の前に着いた。
【アルセーヌ】 開ける……前に、鍵のチェック。
【GM】 鍵はかかってて、開かない。
【アルセーヌ】 なら、[鍵開け]だ。
【GM】 ところが、シーフの技能をもってしても、この錠前ははずせないようやね。
【レイス】 魔法の鍵?
【アイオライト】 誰か、ディスペルか何か使えたっけ?
【レイス】 使えないッス。
【アイオライト】 しょうがない、ぶち壊しますか。
【アルセーヌ】 それしかないんちゃうかな。鍵がかかってるってことは、この奥には何か大切なものが隠されてる、ってことやろし。
【レイス】 やっちゃいますか。
というわけで、〈ロック〉のかかった扉をぶち壊して、冒険者たちは部屋(O)に入った。
中にいた2匹のゴブリンと1匹のホブゴブリンは、当然のように戦闘準備を整えて、3人を待ち構えていた。
しかし、いざ戦闘が始まると、冒険者たちはいつになくいいダイス目を出しまくり、あっという間に魔物たちを蹴散らしてしまった。
【GM】 虐殺された。
【アイオライト】 「ふぅ」とひと息ついて、さあ行こか〜って。
【アルセーヌ】 部屋(O)には扉がひとつあるんや。じゃあ、そこを開けてみる。
【GM】 向こうは部屋(P)やね。部屋の手前にはふかふかのベッドがひとつ、奥には粗末な小さな机がひとつと、同じく粗末な椅子が1脚。
人影はありませんな。
【レイス】 でも、誰かが使ってる様子だと。
で、扉は?
【GM】 入ってきたところ以外は、とくに見当たらない。
【レイス】 うおぉ。
【アイオライト】 部屋(P)の向こうに、何かあるはずだよねぇ。
【レイス】 たぶん、3階の謎の空間へ行く階段が隠されてるはず。
【アルセーヌ】 先に5階へ上がってみてみないかい?
【アイオライト】 そうだね、行けるとこは全部行ってみて、それから改めて探索してみましょうかい。
というわけで3人は5階へ上がったが、そこは壁も天井もとうの昔に崩れ去って、無残な瓦礫を野ざらしにしている無蓋の空間と成り果てていた。
風が砂埃を運び、何年もかけて堆積させ、そこに同じく風に飛ばされてきた草の種子が根を張り、空中の草原を成していた。
【レイス】 何もなさそうな感じかな。
【アイオライト】 部屋(P)に戻る?
【レイス】 戻って、細かく探索してみよか。
【GM】 では、キミたちは部屋(P)に戻ってきました。
【アルセーヌ】 僕がシーフ技能で壁を調べてみるよ。とくに奥の壁を念入りに。(ころっ)
【GM】 場所を指定して調べたから、簡単に見つけられたね。奥の壁の一部、椅子の後ろにあたるところが隠し扉になってたよ。
その向こうは部屋(Q)になっていて、予想通り、下に行く階段がある。
【アルセーヌ】 みんなでゾロゾロと下りて行くねんな。
【アイオライト】 いちおう[聞き耳]とかせんでいい?
【アルセーヌ】 したい?
【アイオライト】 そらなぁ、いちおうなぁ。
【アルセーヌ】 じゃあ、[聞き耳]してみる。(ころっ)
【GM】 それは階段の上でやってるんやね? なら、とくに怪しい物音を聞き分けることはできなかったよ。
【レイス】 じゃあ、そろそろ〜っと階段を下りてみますか。
【GM】 ちなみに階下は真っ暗ね。窓がないから。
【アルセーヌ】 [インフラビジョン]で何か見える?
【GM】 とくに何も見えない。
【アイオライト】 ということは、誰もいないの?
【レイス】 ここがどんな空間かわからないし。単なる通路なのか、あっちに扉がある小さな部屋か。
とりあえず、たいまつを点けてみよう。
【アイオライト】 どう考えても、ここの住人、部屋(P)に鍵かけてないなんて、作戦ミスだよなぁ。
【レイス】 ここがどうなってるのか確かめないと、何とも言えないけど。
【アルセーヌ】 たいまつを火を点けるよ。
【アイオライト】 点けてもいいけど、私、持てないからね。戦闘になったら投げ捨てなきゃいけないし。
【アルセーヌ】 なに、僕が持つの?
【レイス】 うん。
【アルセーヌ】 持ってもええけど、精霊魔法が使われへんで。
【アイオライト】 今までだって使ってなかったじゃん。
【アルセーヌ】 温存してただけやけど。まあ、ええわ。たいまつやったら、投げ捨てても消えへんし。
で、GM、周りはどんな感じ?
【GM】 キミたちがいるのは、通路やね。
【レイス】 用心しながら進みましょうか。
【アイオライト】 とくに落とし穴にね。
冒険者たちは部屋(R)に入った。
【アイオライト】 私は背後の扉を注意して見てます。
【GM】 ほう、慎重やね。
【アルセーヌ】 じゃあ、その間に部屋(R)を探索してみるけど。
【GM】 なら、雑多な荷物の中で、ひとつ目を引く箱を見つけるよ。まあ、ありていに言えば、シーフの直感で宝箱っぽい感じと見て取ったわけやね。
【レイス】 宝箱ッスか。
【GM】 「見るからに宝箱!」って感じではないけど、盗賊の鼻で、なんとなく何かが隠されてそうやな〜って思ったんやね。
【アルセーヌ】 いちおう罠を調べてみるけど。誰か、たいまつを持っててくれへん?
【レイス】 じゃあ、ボクが。後ろから照らしときます。
【アルセーヌ】 [罠発見]、(ころっ)
【GM】 罠は見つからなかった。ちなみに鍵はかかってなさそう。
【アルセーヌ】 開けてみる。中には何か入ってる?
【GM】 主にガラクタが詰め込まれてるよ。その中でめぼしい物は、変てこなブーツと、変てこな絨毯かな。
【アイオライト】 それが何なのか、わかる?
【GM】 セージ技能でチェックすれば。
【アルセーヌ】 僕がセージ技能を持ってるよ。じゃあ、まずはブーツから調べる。(ころっ)
【GM】 アルセーヌは、そのブーツがどんなアイテムか見抜いた。それは、足音を消すことができるブーツですな。
【レイス】 消音ブーツ。
【アルセーヌ】 ほほう、足音を。僕にうってつけやね。
ほな、絨毯も調べる。(ころっ)
【GM】 それはちょっとわからない。
【アイオライト】 絨毯といえば、普通は空飛ぶ絨毯だよなぁ。
【レイス】 とりあえず、絨毯は丸めて背負い袋の上にくくりつけとこう。
【アルセーヌ】 ブーツはここで履き換えるわ。
【レイス】 GM、ブーツってひとり分?
【GM】 うん。
【レイス】 残念。
【GM】 欲しかった? 水虫持ちのブーツ(笑)。
【アルセーヌ】 マジ!?
【レイス】 トラップやった(笑)。
【GM】 冗談やけどね。
【アルセーヌ】 じゃあ、アイオライトが見張ってる、向かい側の扉へ行ってみようか。
【GM】 ちなみにそのドアは、ちょっと豪華やね。漆塗りで、真鍮の細やかな装飾が凝らされた、両開きの扉。
【アイオライト】 ボスの間ってことね。燃やしちゃおうか。燻されて中で窒息してくれたら、戦う必要がなくなる。
【レイス】 戦う必要はなくなるかも知れんけど、鞘をまだ見つけてないから、燃やすのは厳しいなぁ。
【アルセーヌ】 何しにここまで来たんか、わからんで(笑)。
【アイオライト】 そうか、それがあるんだ。
【アルセーヌ】 ないとは思うけど、いちおう罠チェック。(ころっ)
【GM】 罠は見つからない。鍵もかかってなさそう。
【アルセーヌ】 [聞き耳]、(ころっ)
【GM】 「い〜っきしッ!」と、くしゃみが聞こえた。
【アルセーヌ】 「中にひとがおるで」(笑)
【レイス】 どうしましょう。突入しますか?
【アルセーヌ】 この扉は押して開ける? それとも、引いて開ける?
【GM】 引いて開ける扉やね。
【アルセーヌ】 じゃあ、僕が引き開けるから、ファイターが突撃するとか。
【アイオライト】 突入したら、すぐに散開ね。〈ライトニング〉とかかけられたら、困るし。中にいるのがソーサラーかどうか、わかんなんだけどね。
……ちょっと待って。相手はファイターかも。鞘なんか欲しがってるんだから。
【レイス】 いや〜、単純に売るのが目的なら、ただの盗賊ってことも。
【アルセーヌ】 その辺は、ここで考えててもしゃあない気がしますけど。
【レイス】 じゃあ、とりあえず突入しますか。アルセーヌが開ける、ボクとアイオライトが突入。
【アイオライト】 私が開けるよ。たいまつを持っててあげるから。
【レイス】 ――だ、そうです。
【アルセーヌ】 じゃあ、僕とレイスが突入班ということやね。
【アイオライト】 次のラウンドで、私も入る。
開けるよ。カタン。
【GM】 扉は開いた。レイスとアルセーヌは、部屋(I)になだれ込んだよ。
ランタンの明かりに照らされる部屋(I)の奥には、社長が座ってそうなマホガニーのでっかい机がひとつある。その向こうの革張りの肘掛つきの椅子には、魔術師ふうの痩せ気味の中年男性がひとり、腰掛けていた。
【レイス】 魔術師か。
【GM】 男は口の端を歪めて笑い、椅子の脇に立てかけていたスタッフを右手に持つと、ゆっくりと椅子から下りた。左手は、足下の何かを探ってるみたい。
とりあえずそっちが早いけど、何かする。
【レイス】 ダダダっと走って、机の上に飛び乗る。
【アルセーヌ】 僕は机を迂回して、走って魔術師のそばまで近づく。レイピアの先を突きつけてやろう。
【GM】 なら、机をまわったアルセーヌは、魔術師の足下に、犬を
石像には銀の首輪がはまっていて、魔術師はそれに左手をかけている。
【アイオライト】 それだけ?
【GM】 そっちの行動が終わったんなら、こちらが行動するけど。
【アルセーヌ】 いいよ。
【GM】 じゃあ、魔術師は犬の石像の首輪をはずした。石像の目が赤く光り、まるで本物の犬のように動き出した。よく訓練された番犬のように、侵入者であるキミたちを襲わんとする気配やね。
「わんっ」
【アイオライト】 うっ、よく考えたら、ふたりとも突入しちゃったら弓矢が撃てん。
【アルセーヌ】 たいまつを引き受けた時点で、飛び道具はあきらめたんかと思った。
【アイオライト】 「鞘を返してもらえませんか?」って聞いてみようかな。
【GM】 「イヤです」
【アイオライト】 「もう使ったの?」
【GM】 「使ってないけど、まだ研究が終わってないから、イヤです」
【アルセーヌ】 とりあえず、自分が持っとうことは認めたんやな。
【アイオライト】 使ってないってことは鞘は無事だから、頑張って叩きのめそうね。
【レイス】 「では、強奪いたします」
【アイオライト】 『強奪』じゃないだろう。私たちが奪うんじゃないんだもん、取り返すんだもん。
【GM】 「あっ、そのブーツは、その絨毯は! 返しなさい」
【アイオライト】 鞘を返してくれたら、返してもいい。
【GM】 そんなこと言うのか。
【アルセーヌ】 「こんな絨毯が、何の役に立つというんだ!」
【GM】 「空を飛ぶときに役立つに決まってるだろう――あっ、言っちゃった!」(笑)
【アイオライト】 べつにいらんと言えばいらんのだがなぁ。
……あっ、帰るとき楽じゃん!
【GM】 計算し尽くされた、このトレジャー(笑)。
【アルセーヌ】 「ところで、鞘の研究はどのくらいかかるんや?」
【GM】 「さあ、それはわからんな。いろいろ研究して、本当にドラゴン・キラーが作れるかどうかも実験して、この鞘に関する著書を出して、わたしは一躍スターになるのだ」
【アイオライト】 ……なんで村人に直接頼まなかったんだろ?
【GM】 村の秘宝やのに、よそ者、それも魔術師に気軽に貸し出すわけがない。おまけに「使うで」って言うてんのに。
【アイオライト】 使うんだ。コピーを作って、それでドラゴン・キラーを作るわけじゃないんだ。
【アルセーヌ】 そないに簡単にコピーが作れたら、すごいで(笑)。
【レイス】 ドラゴン・キラーだらけになりそう。
【アイオライト】 じゃあ、叩きのめそうか。
【レイス】 戦闘開始。
【GM】 行動順位は、アイオライト、アルセーヌ、魔術師と犬が同時、最後にレイス。
【レイス】 わお、ボクがいちばん遅いんや。
【アイオライト】 私からだけど、何もできない。とりあえず、部屋の中に入ろう。
【アルセーヌ】 魔術師に掴みかかりたいけど、もしかして犬が邪魔?
【GM】 邪魔やねぇ。「わん」って言うて、しかも「ウ〜」って唸ってるし。
【アルセーヌ】 まいったな。じゃあ、先に犬の相手をしようか。
【アイオライト】 私の位置からだと、机が邪魔で犬は見えないんだよねぇ。「何をやってるんだろう?」って感じ。
【アルセーヌ】 レイピアで攻撃するよ。(ころっ)おっ、クリティカルった。13点。
【GM】 犬の反撃、噛みつくよ。――おっと、それは回避失敗やね。ダメージは6点。
【アイオライト】 えぇ〜!?
【レイス】 やべぇ。
【アルセーヌ】 かなり強いみたいやで。
【GM】 そら、アルセーヌはハード・レザーやもんな。なめとったらいかんで。ボス戦やで。
【アイオライト】 レイスとアルセーヌ、入れ替わったほうがいいんじゃないか?
【GM】 とりあえず、犬と同時に魔術師の行動。魔法も使わずに死ぬような間抜けなことはしたくないんで、最初からバシバシいくで〜。
魔術師は、黒い犬に何か魔法をかけた。犬の牙が光り出す。ふふっ(笑)。
【アルセーヌ】 〈エンチャウント・ウェポン〉っぽい。渋いことしよったな。イヤやな。
【レイス】 ついに出番が回ってきた。先に魔術師を倒してしまおう。社長を、シャチョさんを。
いくぞ〜、(ころっ)。あっ、低い。でも当たった、ダメージ9点。
【GM】 「痛ぇ!」
はい、次のラウンド。
【アイオライト】 どうする、アルセーヌ。回復しとく? それとも、みんなで寄ってたかった魔術師を先に倒してしまう?
【レイス】 犬のほうがやばいで。
【アイオライト】 でも、魔法で何かされたら厄介だし。どの道、机が邪魔で犬には攻撃できなんだよ、私は。
【アルセーヌ】 それなら行動を最後にして、状況を見て決めるというのは?
【アイオライト】 じゃあ、そうする。
【アルセーヌ】 僕はいったん、バックステップ踏んで間合いを取るで。
【アイオライト】 机を飛び越えて、こっちに逃げてくれば?
【レイス】 ところが、机の上にはボクが(笑)。
【アイオライト】 ああ、そうか〜。
【アルセーヌ】 それ以前に、机を飛び越えるなんてできるの?(笑)
【GM】 飛び越す? 6ゾロならば(笑)。
【アルセーヌ】 机をぐるっと回って、魔術師側へ移動することは可能?
【GM】 そのためには、誰かがアルセーヌを攻撃している犬を引き受けないとね。
【レイス】 それなら、ボクが机の上から槍で牽制しますよ。
【GM】 だったらOKかな。とりあえず、アルセーヌが魔術師のほうへ行った、と。
では、犬の行動ね。机にぴょんと飛び乗って、光る牙でレイスに噛みつく。
【レイス】 わおっ! (ころっ)あー、噛まれた。
【GM】 ダメージは6点ね。ちぇっ、チェイン・メイルやからな〜。
【アルセーヌ】 だから僕は魔術師のほうへ逃げたんやけどね(笑)。
【レイス】 しかし、痛い。
【アイオライト】 これ、撤退したほうがよくないか?
【アルセーヌ】 逃げよったら、たぶん後ろからやられるで。
【GM】 とりあえず、犬と同時に魔術師の行動ね。
アルセーヌとレイスに魔法が行くで。精神力抵抗してや。
【アルセーヌ】 (ころっ)成功。頑張った。
【レイス】 (ころっ)抵抗した。
【GM】 ちっ、虚しくエネルギー弾がはじけるぜ。ダメージは、アルセーヌに9点、レイスに同じく9点。レベルで止めて。
【アイオライト】 生きてる?
【アルセーヌ】 残り生命力1点。
【レイス】 倒れた。はっはっは(笑)。
【GM】 じゃあ、生死判定してみて。
【レイス】 (ころっ)いちおう生きてる。
【GM】 レイスは行動不能なので、このラウンドの最後に行動を回したアイオライトの行動。
【アイオライト】 ふたりに〈キュアー・ウーンズ〉かけるけど、そうすると精神力が残り3点になってしまう。後で魔晶石ちょうだいね。
(ころっ)レイスを8点治して、アルセーヌを……あっ、ごめん4点しか治らない。
【アルセーヌ】 うおぅ。
【レイス】 しかし、8点か……犬に食われて死んでしまいそう。
【GM】 第3ラウンドね。
このラウンド、アイオライトはたいまつを捨てて弓矢で魔術師を狙ったがはずれ、アルセーヌがレイピアで魔術師にダメージを与えた。
レイスを屠った(このラウンドではまだ起き上がっていない)黒い犬は、その牙の目標をアイオライトに変えた。
机から飛び降りた勢いで、アイオライトに襲いかかる。
【アルセーヌ】 避けろ。
【アイオライト】 そうは言っても、私、回避力ゼロなんですけど〜。(ころっ)ほら、ダメだ。
【GM】 ダメージは9点ね。
【アイオライト】 生命力8点残っとる。
【GM】 魔術師は自分に何か魔法をかけたようです。
【レイス】 回復か?
【GM】 いや、治癒したようには見えへんね。
【レイス】 さて、ボクは犬を狙うべきか、魔術師を狙うべきか。
【アイオライト】 魔術師を狙って欲しいなぁ。また何か魔法がきたら、怖い。
【アルセーヌ】 もう、そんなに精神点残ってへんと思うで。けっこう魔法を使ってたし。
【レイス】 よし、魔術師はアルセーヌに任せて、ボクは犬を攻撃しよう。
【アルセーヌ】 仕留めてや。
【レイス】 (ころっ)あああ〜、はずれた。
【GM】 第4ラウンド〜。
行動を遅らせたアイオライトに、アルセーヌが魔晶石を投げて寄越した。
続いて黒い犬の光る牙が、再びアイオライトを襲う。それを避けきれないアイオライトは、6点のダメージを受けた。
魔術師は[防御姿勢(パリィ)]で何とかこの場を凌ごうとする。
【アルセーヌ】 やっぱり精神力が尽きたか(笑)。
レイスはスピアで黒い犬を突き、8点のダメージを与えた。
行動を遅らせたアイオライトは、2倍消費の〈キュアー・ウーンズ〉を、生命力が2桁減っているレイスと自分にかけた。
【アイオライト】 4点しか治らなかったよ、私は。
【GM】 ほとんど治ってないに等しいな。
【レイス】 犬が来たら終わりや。
【GM】 次の犬の目標は、ダイスで決めてあげるよ(笑)。
とりあえず、第5ラウンドはアイオライト。
アイオライトはこのラウンド、[防御姿勢(パリィ)]を選んだ。
アルセーヌはレイピアで黒い犬を攻撃して、少しばかりのダメージを与えた。
そして黒い犬の反撃は、ダイスでレイスが選ばれた。
レイスは回避に失敗し、6点のダメージをくらった。
【GM】 みんな犬にかかりっきりなので、魔術師は防御を解いて魔法を唱える。目標は――(ころっ)。
アイオライトやね。抵抗してくれ。
【アイオライト】 はいよ。(ころっ)失敗。みんな、さようなら。
【GM】 ダメージは8点。レベルで止めて。
【アイオライト】 さいなら〜。
【GM】 生死判定は?
【アイオライト】 (ころっ)生きてはいる。でもプリーストは私だけだし、レンジャー持ってるの私だけだから、[応急手当て]もしてもらえない。
【アルセーヌ】 大変やで。
【レイス】 ボクの番。魔術師を狙うか。魔術師を倒して犬が止まらなかったら、もう知らんって感じで。
当たるんかな〜、あーたれ! (ころっ)ダメージ6点。
【GM】 そいつはガイーンだな。魔術師のソフト・レザーはちょっと光ってるから。
【アイオライト】 ……もう、置いて逃げてくれていいよ。怒んないから。
【アルセーヌ】 逃げても犬に追われて殺されそう。
【レイス】 絨毯で飛んで行くとか。
【アイオライト】 荷袋にくくりつけてるから、頑張って縄を解いてくれ(笑)。
【レイス】 その間に犬に噛まれるか。
【アルセーヌ】 それなら、まだ向かって行って倒れたほうがマシか。
【GM】 悲壮な決意やな(笑)。
【アイオライト】 だって、犬が強過ぎるよ、これ〜。
【アルセーヌ】 ええわ、確実に倒せそうな魔術師を狙うわ。(ころっ)当たり、ダメージへぼい。6点や〜。
【GM】 ガイーンや〜。
狙われた魔術師は防御を選び、黒い犬はレイスに噛みついたが上手くかわされた。
レイスは今度は黒い犬を攻撃する。
【GM】 魔術師狙ったり犬を狙ったり、フラフラせずに、目標をどっちかに絞ったほうがいいと思うけど……。
【レイス】 (ころっ)とりあえず、当たり。ダメージは……1ゾロ〜!
【アイオライト】 あーっ。
【GM】 どうしようもないな(笑)。
こんな調子で、ロクにダメージを与えられない状況が続く。
しかし回避に関しては、よい出目を振るようになり、黒い犬の恐ろしい牙をひょいひょいかわしまくる。(魔術師はアルセーヌに接敵されてるため、パリィを続けている)
第9ラウンドの終わりに、レイスのスピアが魔術師の強化されたソフト・レザーを貫き、大ダメージを与えた。
続く第10ラウンドの最初の行動は、アルセーヌ。
【アルセーヌ】 (ころっ)当たり、ダメージ7点。
【GM】 じゃあ、魔術師は降伏を申し出ますけど。
「わかった、村から盗んだ鞘は返そう」
【レイス】 「とりあえず、犬を何とかしてくれ」
【GM】 「止めます、止めます」
魔術師は銀の首輪を黒い犬にはめた。すると、犬は元の石像に戻ってしまった。
【レイス】 「それから、死んでる奴を何とかしてくれ」
【GM】 「いや、それは何とも……わたしはしがないソーサラーなので」(笑)
【アイオライト】 とりあえず、村に連れて帰って手当てしてくれたら、何とかなるっしょ。
【アルセーヌ】 死んではないからな。
【アイオライト】 それから、「後で返すから絨毯の使い方を教えて」って。死体を担いであの川は越えられんでしょ?
【アルセーヌ】 『後で返す』とか、いらんことは言わんでええねんで(笑)。
【レイス】 そうそう。ま、死んでるから何も言えへんやろうけど。
【アイオライト】 いや、私は後で返しに来るよ。
【アルセーヌ】 じゃ、とりあえず魔術師の武装解除をする。発動体を渡して。
【GM】 魔術師は素直に渡した。
【レイス】 鞘は?
【GM】 返してもらったよ。ドラゴンの彫刻が飾りつけられた、いかにも、って感じの古い鞘やね。
【レイス】 おおー。
【アルセーヌ】 それじゃ、帰ろうかい。
ちなみに絨毯って何人乗り?
【GM】 えーっと、ひとり乗りやね。飛行時間は1日に1時間だけ。
【レイス】 死体だけで満員か。
【アルセーヌ】 しゃあない、宙に浮かんだ絨毯をロープで牽引して行こう(笑)。
何とか全滅せずにドラゴンの鞘を奪還した冒険者たちは、意識を失ったアイオライトを空飛ぶ絨毯に乗せて、村に帰って来た。
アイオライトは村で手厚く看病されて、翌日、目を覚ました。
村の秘宝が帰ってきたことを喜んだ村人たちは、冒険者たちの功績を称えて、盛大な宴を催してくれた。
秘宝にまつわる冒険者たちの物語は、ドラゴンの鞘の村でいつまでも伝えられていくことであろう――。