≪REV / EXIT / FWD≫

§銀月の歌:第30話§

疾風怒濤の追跡者

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 襲撃者と魔術師の事 ▽ ミドル地方の旅の事 ▽ サリア到達の事

襲撃者と魔術師の事

【メイユール】 オムレツに飢えたんかな。禁断症状が出て、ちょっと放浪してるんや。
【シルヴィア】 賭場に飢えるメイユールじゃあるまいし。
【メイユール】 なにぃ!?
【シルヴィア】 声には出さへんよ。そんなふうに思うとくだけ。
【メイユール】 そういう空気を感じて、カーっと睨んどくわ。
【GM】 睨まれてるで、シルヴィア(笑)。
【シルヴィア】 じゃあ、「メイユールはおるな」って思うとく。
【ティガー】 ぼちはおるの?
【GM】 ぼちは(うまや)で鼻ちょうちんを膨らませてるよ。ヒデヨシも自分のベッドで寝てる。
【ティガー】 どこ行ったんやろ、俺? 自分で出かけたんやろか。
【GM】 それを受けて、シルヴィアとメイユールはどうするかな?
【メイユール】 う〜ん……また、寝る。
【シルヴィア】 ティガーのベッドを触ってみる。
【GM】 まだ温かい。
【シルヴィア】 ほんなら、いなくなってそんなに時間は経ってないな。とりあえず部屋から出て、辺りを探してみよう。
【GM】 そうしてシルヴィアが『荒野のオアシス亭』の中庭に出たとき、「おい」と、背後から声をかけられた。
【シルヴィア】 振り向くよ。
【GM】 するとそこに、1ヶ月ほど前にメミンゲンの宿屋で騒ぎを起こした、オレンジ色の長髪の若者がいた。
【シルヴィア】 おお!? 「久しぶりやな、何しとったん?」
【GM】 「あの写真、あのとき忘れてなかった?」
【シルヴィア】 「ああ、アレね。あれはもう処分した」
【GM】 「うそっ!? じゃあ、また撮りに行かな。奴らの部屋はどこ?」
【シルヴィア】 「それは教えられへんな」
【GM】 「じゃあ、自分で探すわ」
【シルヴィア】 「まあまあ、そう焦らずに」と、捕まえとく。
「しばらく見んかったけど、何してたん?」
【GM】 あれからオレンブルクに戻って、例の写真をファンリーに見せようとしたらしい。
「ファンリーちゃんに見て欲しいものがあるんだけど」と、懐をまさぐってみたら、あの写真がどこにもない。
【シルヴィア】 それまで気づかんかったんか。
【メイユール】 あはは、トロくさ〜! いいキャラやな(笑)。
【ティガー】 それにしては、ここまで来るの早いな。
【GM】 「フッ。オレ、昼間はコウモリだからな」
【シルヴィア】 なに??
【GM】 「昼は道行く馬車の荷台に潜り込んで眠り、夜は馬を黙って拝借して先を急ぎ、夜を日についでやって来たんだ」と、若者は答えた。
【ティガー】 ――あっ、誰かわかった! あー、あいつね。……あいつ、めっちゃ強いやん。
【GM】 だから、「オレは強いぞ」って言うたやん(笑)。
 でも、メイユールの〈シェイド〉のクリティカルのせいで、精神力的に死にかけててん。シャーマン技能レベルは、メイユールもそれほど変わらんからね。バルキリーが使えないから、女シャーマンは弱く見えるけど。
【シルヴィア】 「で、キミのことは何と呼べばいいんかな? そっちは、僕らのこと知ってるみたいやけど」
【GM】 「シュトルム・ウント・ドランクだ」きらーん!
【ティガー】 あのヤロ〜(笑)。
【シルヴィア】 「んじゃ、シュトルム。あの怪しげなアイテムを持って来てるわけ?」
【GM】 「あたりまえじゃん」
【シルヴィア】 「じゃあ、記念に1枚撮って欲しいな」
【GM】 「は?? 男なんか撮っても、おもしろくないぞ」
【シルヴィア】 「そんなこと言わずに、一緒に撮ろうや」(笑)
【ティガー】 腕伸ばして、ふたりで並んでるところを撮るの?(笑)
【GM】 じゃあ、そうやって写真を撮った。機械からシャコーっと出てきた紙に、ふたり肩を組んだシルヴィアとシュトルムの姿が、じわ〜っと浮かびあがる。
【シルヴィア】 「おお、すげー。これはどういう原理で、こんなふうになるの?」
【GM】 「知らないよ。拾ったのを使ってるだけやし」
【シルヴィア】 「その機械、欲しいなぁ」
【GM】 「あげられないな」と、シュトルムは断る。彼は今、新婚旅行でレムリア大陸をまわってる途中らしいねん。
【ティガー】 え?
【シルヴィア】 ひとりで?
【GM】 いや、奥さんとふたりでやで。
【ティガー】 いやいや、『ファンリーちゃん』に気を取られ過ぎやもん(笑)。
【GM】 それには切ない理由があるのよ。
 シュトルムと、高レベルな魔術師である彼の奥さんは、サリア地方のはるか南の島から渡って来て、1年近くかけて大陸を巡り、オレンブルクにやって来た。
【シルヴィア】 ほう。
【GM】 知ってのとおり、オレンブルクには、大陸一と言われるほど大規模な魔術師ギルドがある。
 高レベルな魔術師シュトルムの奥さんは、そんなオレンブルクの魔術師ギルドを訪れて、今までみたことない書物や研究施設にハマってしまったのか、ギルドへ頻繁に出入りするようになった。
 ギルドにとっても、高度な技術を身につけてる奥さんの存在は貴重。夜しか現れない彼女のために、専用の部屋を用意してあげるほど。
【ティガー】 で、シュトルム、ほったらかされたんや。
【GM】 そう。あまりかまってもらえなくなって、ちょっと寂しいねん。
【メイユール】 知るか〜!(笑)
【GM】 そうして、心にちょっと傷を負ってミフォア大神殿の前を飛んでたとき、通りを掃き清めてるファンリーを見てしまったんやね。
 で、ずきゅーんときたらしい。
【ティガー】 奥さ〜ん、殺してあげてくださーい(笑)。
【シルヴィア】 「大変やな」
【GM】 「そういえば、ここのスイートに泊ったなぁ」と、シュトルムは懐かしそうに『荒野のオアシス亭』の建物を眺める。
「あの頃は楽しかった……あ、新婚旅行の写真、見る?」
【シルヴィア】 ちょっと見せてもらおう。
【メイユール】 ティガーを探せよ(笑)。
【GM】 奥さんはピンクの髪の女性で、なかなか美人。ちょっとソバカスがあるけど、それも魅力的。
 全国各地の名所を背景に、ふたりで仲良く写ってる。ほとんどが、日が沈んだ直後とか、日が昇る前のものやけどね。
【ティガー】 昼間はコウモリになってるもんな(笑)。
【GM】 雄大な景色のオストレイクとか、シルヴィアの故郷のファノンの街とか、ハインのシルファス寺院とか。『荒野のオアシス亭』の前で、オヤジさんを挟んで写ってるのもある。
 オレンブルクで撮ったのが最後かな。
【シルヴィア】 写真の奥さんに見覚えはある?
【GM】 いや、シルヴィアは見たことないひとやね。
【シルヴィア】 「こんな美人の奥さんがいるんなら、別にファンリーはいらんでしょ」
【GM】 それが、奥さんはお姉さん属性で、ファンリーは妹属性らしい。
【ティガー】 全属性欲しいわけね(笑)。
【シルヴィア】 なにを贅沢な。
【メイユール】 つっこむのは、そこなんか!
【シルヴィア】 男としてのツッコミやね。
【ティガー】 メイユールちゃんはどうなん?
【メイユール】 イェ〜♪
【GM】 メイユールちゃんは、好みじゃないらしい。
【メイユール】 なにぃー!? 机、ガーンって蹴っとこう(笑)。
【GM】 キミは部屋で寝てるんでしょ。
【メイユール】 変な夢を見てるねん。「好みじゃない、って言われたぁ」って。
【GM】 シュトルムは、かわいい系が好みらしいから、しょうがない。
【メイユール】 わたしは違うんか。
【GM】 だって、酒場で耳に赤ペンはさんで競馬新聞読んでたり、起きていきなり吐いたりしてる印象しかないもん、シュトルム的には。
【ティガー】 第一印象、最悪(笑)。
【メイユール】 あはは。そら、救いようがないな(笑)。
【GM】 んで、シルヴィアはどうする? とくにすることがないなら、シュトルムは、キミたちが泊ってる部屋を、勝手に探し始めるけど。
【シルヴィア】 「危害を加えないと約束するなら、部屋に案内してあげるよ」って言う。
【GM】 「わかったよ、ティガーの命は狙わない。ファンリーちゃんが手に入れば、それでいいや」
【シルヴィア】 「まあ、それは置いといて」
【GM】 「それに、保険金のこと言うたら、ファンリーちゃんに怒られた」
【メイユール】 しゃべったんか。
【GM】 口説き落とそうとして。
【ティガー】 んなもんで落ちるか!(笑)
【GM】 「怒った顔もかわいかったなぁ」
【ティガー】 知るかーッ!
【GM】 「というわけで、ティガー幻滅作戦に絞ることにするぞ」
【シルヴィア】 「命に害が及ばないなら、何だってええよ」
 じゃあ、部屋に案内してあげよう。どうせ、ティガーはおれへんのわかってるし。
【GM】 では、シルヴィアはシュトルムを伴って宿泊部屋に戻った。
 すると、ベッドでティガーが寝ている。
【ティガー】 は?
【メイユール】 あれ??
【GM】 ティガーはね、見なれない白いツヴァイハンダーを抱いて寝てるよ。
【メイユール】 あー、そうか、そうか。
【ティガー】 ウサギ男に召喚されてたんや。
【シルヴィア】 「あ、おった。シャッターチャンスやで」って、シュトルムに言う。
【GM】 「じゃあ、あの女を運ぶの手伝って」
【シルヴィア】 「いや、起こしてもたら怖いし」(笑)
【GM】 じゃあ、またシュトルムがひとりで運ぶわ。
 メイユールは、運ばれるとき、起きたかどうかのチェックをしてもいいよ。
【メイユール】 じゃあ、チェックする。(ころっ)あっ、起きた。
「なに〜?」
【GM】 「ベッド、間違えてますよ」
【メイユール】 「ああ、そう。どこ〜?」
【GM】 「あっち、あっち」
【メイユール】 「あ〜、はいはい」
【GM】 シュトルムは、労せずメイユールをティガーのベッドに運べた。
【シルヴィア】 何のために起きたんや(笑)。
【GM】 シュトルムは、「この剣、邪魔だな」と、白いツヴァイハンダーを取ろうとする。
【ティガー】 なんか取られそうになったから、「ダメぇ〜!」って起きる。
 で、「なに、この剣?!」って騒ぐ(笑)

ミドル地方の旅の事

【シルヴィア】 それは、こっちが聞きたいわ。
【ティガー】 「あっ、これ、夢の剣や!」って言う。
【メイユール】 その声で、「うるせー!」って起きる。
【ティガー】 「夢がホントになってん。トト○の芽ぇみたい」
【メイユール】 「はあ??」
【GM】 そのとき、パシャっと閃光がはしった。
【ティガー】 「あっ! また、いた!」(笑)
【メイユール】 「また、おまえか!」(笑)
【GM】 「前の写真、忘れていったからな」
【ティガー】 「知るかよ」
【GM】 「今度こそ、ファンリーちゃんに渡すから」
【ティガー】 「今度こそ、斬るから。新しい剣で」
 新しい剣を装備してみる。「どんなんやろー?」
【メイユール】 試し斬りや。
【GM】 そいつは魔法の剣、『マドナガルの剣』。インテリジェンス・ソードの類です。
【ティガー】 なに? 装備したら、頭が良くなるの?
【GM】 じゃなくて、剣に知性があんの。
【ティガー】 じゃあ、剣がしゃべるの?
【GM】 残念ながら、その剣はしゃべらない。クールで寡黙なんやね。
【ティガー】 ちぇ。
【GM】 でも、キミが剣にしゃべりかけるのは自由。
【ティガー】 イヤだ。やんないよ(笑)。
【GM】 必要筋力14の高品質な剣で、打撃力は片手で19、両手で24。
 知性があるこの剣は、持ち主を選ぶ。マドナガルの剣に認められた者が手に持つとき、柄の宝石が緑に光る。
 そのとき、この剣の真の力が働くんやね。
【ティガー】 今は働いてないんや。
【GM】 残念ながら、宝石は光ってないしね。
 というわけで、剣の詳しいスペックは、真の力が解放されたときに教えましょう。
【ティガー】 じゃあ、普通のツヴァイハンダーのほうが強いや。
【GM】 とりあえず、シュトルムは目的を果たしたので、オレンブルクに帰ろうとするよ。
【ティガー】 マクドナルド(・・・・・・)の剣は弱そうやから、ヒデヨシを投げて撃ち落とす。(ころっ)
【GM】 (ころっ)シュトルムは片手でパシっと受け止めた。
【ティガー】 「やるな」って思ってる。ヒデヨシ、そこで光れ!
【GM】 「こけっ」ヒデヨシは、しゅご〜っと7色に光り始めた。
 シュトルムは、「うおっ!? なんだ、こりゃ!」と驚いてる。
【ティガー】 「すごいよ」
【メイユール】 目つき悪いし、ツノ生えてるし。
【GM】 「これ、持って帰ってもいいか?」
【ティガー】 「持って帰れるもんなら、持って帰っていいけど」
【メイユール】 ヒデヨシ、暴れるで。
【GM】 じゃあ、シュトルムは〈スリープ〉を唱えるよ。
 ヒデヨシ、レジストして。モンスターレベルと精神力ボーナスで――そんな数値、決まってない? じゃあ、今、適当に決めて(笑)。
【ティガー】 ほんなら、モンスターレベル8で、精神力ボーナスはプラス1。(ころっ)寝た。ぐう。
【GM】 ヒデヨシは、光ったまま寝てる。
【シルヴィア】 イルミネーションや。
【ティガー】 「きれー!」
【GM】 「きれいやなぁ」と、シュトルムもうっとり。
「ラヴァーズさん、きっと喜ぶぞ。サンキュー、ティガー」
【ティガー】 「うん、飽きたら返してね」
【GM】 じゃあ、シュトルムは、ヒデヨシを手に意気揚揚と帰って行った。
【メイユール】 わたしらの近況報告の代わりになるかも。
【ティガー】 たぶん、ファンリーにもヒデヨシを見せよるから。あ、ヒデヨシに手紙をつけとけばよかった。
【シルヴィア】 あの写真が、元気にしてる証拠になるでしょ。
【GM】 ベッドでティガーが剣を見てびっくりして、その横でメイユールが怒ってる写真ね。
【メイユール】 変な写真やな。
【GM】 ファンリーが誤解してくれたら、それでいいから。
【ティガー】 誤解……せえへんと思うなぁ。
【GM】 まあ、その写真は床に落ちてるわけやけど。
【シルヴィア】 またか!(笑)
【GM】 そんなこんなで、7月18日の朝になりました。
 キミたちはカナート村を出て、さらに南へ向かいます。

 7月22日にヤルト王国のヤークに至り、冒険者たちはミドル地方に入った。

【GM】 ここは金山の街で、砂金じゃなくて金塊が採れるらしいよ。
【ティガー】 すごいね(笑)。
【GM】 それはたぶん、この地にあった太古の王国の埋蔵金かとか、ドラゴンとかが隠し溜めた財宝とかなんやろね。
【シルヴィア】 今でも金塊が採れるの?
【GM】 レムリア暦541年の段階でも採れてたみたいやから、530年の今も採れてるやろね。
 すごい栄えてるような気がするけど、意外とこじんまりとした街なんやな。めったに採掘できへんのかも知れんね。
【メイユール】 10年に1回、金塊が出てくるとか。

 そんなヤークを出て6日ほど行くと、ハインベル王国の王都ハインに到着した。

【GM】 ハインベル王国は至高神シルファスを祀る国で、シルファス教の総本山ともいうべき存在。建物のほとんどが白いんやろな。
【ティガー】 神殿ばっかりそう。
【GM】 そうやね。シルファス関連の寺院がたくさんある。というか、王都そのものがシルファス大神殿って感じ。
【シルヴィア】 それはすごい。
【メイユール】 見るとこなさそう。興味ない。
【GM】 この国の王様は、大陸中のシルファス教の頂点に立つ方で、“法王”と称されてるらしい。
 関係ないけど、今、はるか北の旧カルファン王国の地では、ウサギ男たちが『天の心』を入手しました。
【メイユール】 おっ、やった!
【GM】 メイユールたちがそれを知る術はないけど、プレイヤーへの情報ってことで。

 街道は、ポーラスへ行くものと、ハリアンギフトへ行くものに分かれる。サリア地方へ向かうのは、ハリアンギフト行きの道だ。
 冒険者たちは、ハリアンギフト、ポトを経て、ハインベル王国を出た。

【GM】 “謎の灯台”へ向かう枝道との分岐点にある小さな町に泊ったとき、〈ロケーション〉で『天の鍵』のある場所を探ったシルヴィアは、南西の方角にその存在を感じた。
【シルヴィア】 近づいてはいる感じ?
【GM】 そうやね、着実に近づいてる感じがする。とはいえ、まだまだ距離はありそうやけど。
【シルヴィア】 ここから南西というと、何がある?
【ティガー】 リモージュ山脈っていうのがある。
【シルヴィア】 その山脈より向こうに感じる?
【GM】 う〜ん……そうやね、そんな感じがする。
【シルヴィア】 南西にまっすぐ線をのばすと、何がある?
【メイユール】 アルファン王国。もっと南西に行ったら、“死霊都市”カナン。
【GM】 途中に“グラスランナーの里”を挟んでるけど。
【ティガー】 そこにはないと思う(笑)。
【シルヴィア】 山越えをすることはできるの?
【GM】 できるけど、道なき山奥は人外の魔境やで。危険極まりない冒険になると思うよ。
【シルヴィア】 山越えするのと、道を行くの、どっちが早い?
【GM】 日数的には、ほとんど変わらない。
【メイユール】 それやったら、安全なほうにしようよ(笑)。
【ティガー】 うん、街道を通って行こか。登山部じゃないからな。
【シルヴィア】 『急がば回れ』やな。

サリア到達の事


 8月18日、冒険者たちは西サルトル王国の都、ボードに着いた。
 そこから、東サルトル王国へ向かうのだが――。

【GM】 西サルトル王国と東サルトル王国は犬猿の仲で、21年後のレムリア暦541年には、戦争が勃発してしまう。
【メイユール】 ほう。
【GM】 今は表だって争いはしてないけど、ここの街道は非常に通りにくい。何かというと兵士に呼び止められて、職務質問を受けてしまう。
 西サルトルを出て東サルトルへ入るときの手続きなんか、2日かかったほど。
【シルヴィア】 困ったとこやな。
【GM】 東から西へ入るときも同様なので、旅人たちはみんな、東西のサルトルで難儀させられてるんやね。
 ここだけの話、西でも東でも通行料ぼったくられるし。
【メイユール】 最悪や。
【GM】 とくに、オレンブルクで商売するチョコ富豪のキャラバンは、かっこうの標的にされてるらしい。金を持ってるのわかってるから。
【シルヴィア】 カモがネギを背負ってる状態にされてるんやな。
【GM】 そんなわけで、ハインベル王国のポトと、サリア地方アルファン王国の王都アルファンを結ぶ道を作ろう、なんてことを言ってるひともいるらしい。
【ティガー】 そうなんや。
【GM】 実現するのかどうか、わからんけどね。構想を立ててるひと、「そんなもん、できるわけがねえ」と、周囲からバカにされてる状態やし。
 まあ、そういうしんどいところを抜けて、キミたちは、ボア王国のボアに入った。
【シルヴィア】 『天の心』と『天の衣』と、待ち合わせしてる場所やね。
【GM】 そう。ウサギたちが来るのは、もっとずっと後やけど。彼らは今、ぴょんぴょん跳ねながら、バウツェンに戻る途中。
 ボアから東に行けば、アリステア地方セフェリア王国。ランディやシルヴィアの故郷やね。
 南へ行けば、サリア地方エストリア王国。こっちは、メイユールの故郷。
【ティガー】 みんな、南のひとなんやねんな。
【GM】 ちなみに、ここで〈ロケーション〉してみると、真西より9度ほど南にずれた方角に、『天の鍵』の存在を感じます。
【ティガー】 ボアから西に線を引いて、ちょっと南にずれると、線上にあるのはノーズとアルファンの街か。
【シルヴィア】 “謎の灯台”のところで南西に感じてたから、『天の鍵』はアルファンにあると思われますが。
【メイユール】 アルファンやろな。
【ティガー】 んじゃ、行こう、行こう。
【GM】 では、ボアを発ったキミたちは、13日後にエストリア王国に到着しました。ついに、サリア地方に足を踏み入れたね。
 この時点で、9月21日。メミンゲンを出て3ヶ月半、夏は過ぎて、秋になってます。
 サリア地方は1年を通して温暖なので、9月でもまだまだ暑い。
【ティガー】 南やから、すごい暑そう。俺、北出身やから、余計に暑いわ。
【メイユール】 わたしは平気やけど。さらに南の出身やから。
【GM】 キミの故郷は、エストリア王国の“漁師の島”やったね。
【メイユール】 里帰りしてる暇はなさそう。
【GM】 グラランボンバーの暴走は、11月15日。あと、2ヶ月切ってる。
【シルヴィア】 えらいこっちゃ。急がな。

 オリエール、サイフォン王国ロストックを通過した、冒険者たちは、サリア地方中央に位置する“自由都市”レダに到達した。
 リッシュブールという名家が領主の地位にあるが、この街でもっとも力を持つものは商人たちであるという。
 もともとはサイフォン王国に属する町のひとつであったが、アルファン王国、ノスレア大公国と中立条約を結んだことがきっかけとなり、商人たちが領民を巻き込む形で独立運動を起こした。
 独立を阻止しようとしたサイフォン王国との紛争に勝利したレダは、サイフォン王国の支配を脱した後、アルファン国王から“自由都市”の特許状を得て、領邦主権を確立した。
 また、レダは、サリア地方の商人たちが組織する『ティエンダ商工同盟』の盟主でもある。

【GM】 以上、レダ設定書から引用したタウンガイドでした。
 ちなみに、そんなレダの現在の領主は、ヴィレーヌ・リッシュブールという37歳の女性だそうです。
【ティガー】 女が領主なんや。
【GM】 設定書によりますと、そのひとは、リッシュブール家の遠縁の貧乏貴族の出身で、若い頃は冒険者をしてたらしい。ファイターだったそうな。
 レダ独立紛争の時には、ファイターの腕前を見込まれて、叔父のレダ方伯に請われて戦列に加わり、勝利の原動力になったらしい。
 レダ独立後は、実子のない叔父の養女となり、民の歓呼に迎えられてレダ領主の座に就いた、ということだそうです。
【シルヴィア】 なるほど。
 ところでGM、僕はここでも日課の〈ロケーション〉を使ってみるけど。
【GM】 そうすると、北西に『天の鍵』の存在を感じた。もう、かなり近づいてる気がする。
【シルヴィア】 『天の鍵』があるのは、アルファン王国で間違いないな。

 レダを出発して4日ほどの道程で、美しい自然の景色を誇るアルファン王国に入る。東からの最初の都市は、オストレイクだ。

【GM】 アルファン王国は、湖と山がきれいな国で、けっこう観光地だそうです。とくに、ここオストレイクは、道にポイ捨てなど許されないほど、きれいなところ。
【シルヴィア】 ちなみに、〈ロケーション〉で感じる『天の鍵』の位置は?
【GM】 ほぼ北にあると言える。もう、かなり近くまで来てるね。
【シルヴィア】 よしよし。じゃあ、針路を北にとろう。
【GM】 では、オストレイクを抜けて、アルファンの都へ続く道を旅する。途中、道は見晴らしのいい高原を通る。
 ちょうど、お昼飯どき。朝、オストレイクの宿屋で買った弁当を、広げるたくなるいい景色。天気も最高にいいし。
【ティガー】 じゃあ、オムレツ弁当を食べてるわ。
【GM】 北東には、美しく山嶺を連ねるグロフィエの山々がある。シエル湖の西を北に延びる山脈で、オストレイクの辺りから眺める景色が最高といわれてる。
 グロフィエ山系でもっとも高いのは、エルハーベン山。アルファン王国側からは、裾に低い山々を従えた勇壮な姿が見れる
【メイユール】 羊は? 高原に羊はおる?
【GM】 ああ、羊もおるねぇ。群れがいるよ。群れはキミらに突進してくる。
【ティガー】 弁当持って逃げらな(笑)。
【メイユール】 平地やから、逃げるとこないで(笑)。
【GM】 ――と、まあ、楽しく過ごしてるキミたちの前に、ふたつの影が立ちふさがる。
【シルヴィア】 誰や?
【GM】 ひとつは、紫がかった長い銀髪の魔術師ふうの青年。
【ティガー】 ハデなローブの奴か。
【メイユール】 量産型や。
【GM】 「しつこい奴らだね。まさか、こんなところまでやって来るとは」
【ティガー】 「しつこいよ。それがウリやから」
【メイユール】 もうひとつの影は?
【GM】 人型のモンスター。顔は髑髏で、背中にコウモリの翼を生やしてる、不気味な姿。右手は鎌になってるよ。
【メイユール】 UMAや!
【GM】 UMAの正体を知りたければ、セージ技能でチェック――ティガーが見抜いた。
 そいつは、ガランザンというレッサー・デーモン。
 言葉巧みにひとの心につけいって、『魂の契約』とやらを結ぶらしい。『魂の契約』を結んでるガランザンは、たとえ倒されても、24時間後には復活してくるとか。
【ティガー】 こいつも、たぶん誰かと契約してるんやろな。
【GM】 レッサー・デーモン系では最強となる、モンスターレベル8。
【ティガー】 なんや、ヒデヨシと同じレベルか。そう考えると、大したことない。
【GM】 そう考えるのが、どうかと思うけど(笑)。
 それじゃあ、戦闘を始めるけど、それはまた後ほどということで。

÷÷ つづく ÷÷
©2007 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2007 Jun Hayashida
Map ©2007 Moyo
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