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§銀月の歌:第8話§

試練を越えて

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン 地図:もよ
▽ 黒猫の願いの事 ▽ 男・ティガー、空を飛ぶ事 ▽ シルヴィア、鍵を手にする事

黒猫の願いの事

【GM】 見事、遺跡の財宝を見つけ出したキミたちは、2本尻尾の黒猫の案内にしたがって、再び迷宮の奥へ向かうところです。
【メイユール】 見つけた袋の正体を尋ねただけやのに、なんでまた奥に行くんやろ?
【ティガー】 まさか、はずした金属盤を元に戻せ、とか。
【GM】 黒猫の耳がピクっと動き、彼は立ち止まった。そして、ティガーに振り向き、「金属盤?」と聞いてきます。
【メイユール】 黙っとけー、ティガー!(笑)
【ティガー】 「気のせい。ウソ」(笑)
【シルヴィア】 背中に隠してた金属盤を出して、黒猫に見せるよ。
「これ、もらっていい?」と聞く。
【GM】 「取っちゃったんですか」と、黒猫は呆れてる。
「あなた方の目的が、それらの財宝ならば、そのプレートは戻しておいてください」
【ティガー】 ん?? 袋とかの財宝が目当てなら戻せ、って? じゃ、「違う」。
【GM】 金属盤が欲しいがために、適当に返事してるやろ(笑)。2本尻尾の黒猫は、ひょいと肩をすくめると、再び通路を歩きはじめた。
「その件は、後で話し合いましょう」
【メイユール】 猫に釘を刺されてしまった。
【GM】 黒猫は、部屋(A)から奥に伸びる通路の途中で立ち止まると、右側の壁を通り抜けて、姿を消してしまった。「こっちです」
【メイユール】 おお、すり抜けや。
【ティガー】 猫についてくで。
【GM】 では、キミたちも幻影の壁を通り抜けて、隠し通路に入った。短い通路で、前方に魔法の明かりが灯った部屋(F)が見える。
 黒猫は、部屋に入ってすぐのところで、キミたちを待っています。
【ティガー】 入る、入る。
【GM】 不用意に部屋に入ったティガーは、なんだか固いものに顔をぶつけてしまった。
【ティガー】 「いてー。何、これ〜?」
【GM】 その固いものは、ゴソリと動く。爬虫類めいたザラザラした体表をもつ、4足歩行の巨大な生き物やね。ワニかトカゲのような頭に小さな角を生やし、背中に蝙蝠めいた小さな翼を持っています。
【ティガー】 なにぃ!?
【GM】 巨大生物は「バフー」と鳴いて、妙な闖入者──ティガーを見る。部屋いっぱい、きつきつサイズなので、頭を動かすと角が天井にこすれてしまう。
【ティガー】 何、こいつ?
【GM】 それを知りたければ、セージ技能でチェックしてみよう。──シルヴィアとティガーが正体を見抜いたね。
 そいつは、インファント・ドラゴンという生物。伝説に名高い幻獣の王、ドラゴンの幼生です。幼生といっても、見たとおり体長5メートルを超えるサイズで、人間からすれば、巨大で恐ろしい存在やけどね。
【メイユール】 UMAや。未確認生物や。
【シルヴィア】 確認できてるって。メイユールに説明してあげよう。
【メイユール】 「いや、あれはUMAや。シルヴィア、間違ってる」(笑)
【シルヴィア】 事実を受け入れなさい(笑)。
【サテラ】 なんで、こんなのがここに?
【GM】 では、2本尻尾の黒猫が説明しましょう。

 数年前のある嵐の夕暮れ。この遺跡に、ある冒険者たちがやって来た。
 彼らが好ましくない人間、つまり邪な輩であることを、黒猫は感知した。黒猫は、この遺跡の主に守護の役目を与えられるとき、特殊な能力を付加されたのだ。
 その邪悪な人間たちは、どこで悪事を働いて盗み出したのか、竜の卵を運んでいた。
 迷宮の入口の守護者である黒猫は、彼ら好ましくない人間を追い返すため、恐ろしい幻影を見せて脅かした。
 竜の卵を盗むという大それたことをしでかしたわりに、悪人たちの肝っ玉はノミほどに小さかったらしく、彼らはあっさりと逃げだした。
 卵を置き去りにして。
 黒猫は制約により迷宮から出ることができず、卵をどうしたものか思案した。
 が、そうこうしてるうちに、竜の卵は孵化してしまい、生まれ出た竜の赤子は、最初に見た黒猫を親だと思い込んでなついてしまった。
 いくらドラゴンとはいえ、赤子を1匹で外に追い出すわけにもいかず、そもそも竜の子が黒猫から離れなかったので、ある程度成長するまで、ここで育てることにした。
 しかし、ドラゴンの成長は想像以上に早く、あっという間に部屋いっぱいにまで大きくなった。部屋(E)には、来訪者にメッセージを伝える装置があったのだが、大きくなったインファント・ドラゴンに踏み潰されてしまうほどだった。
 とうとう部屋から出られなくなり、困っていたところに、この迷宮を訪れたのが、ティガーたちだった──。

【GM】 「そういうわけで、この子を外に出してやって欲しいのです」
【メイユール】 どうやって?
【GM】 「その袋は『無限のバッグ』といって、5メートル四方までの物体なら、大きさを無視して入れることができる、魔法の物品なんです」と、黒猫は言う。
【シルヴィア】 なるほどね。
【ティガー】 こいつにドラゴンの子を入れて外に出せ、と。
【GM】 「そうです。引き受けてくれるのなら、そちらの魔術師おふたりに、秘伝の魔法の呪文を授けましょう」と、黒猫は言う。
「断るのなら、それらの財宝は──とくに無限のバッグは、置いていってもらいます」
【メイユール】 引き受けましょう(笑)。
【シルヴィア】 その子を外に出せば、それでいいの?
【GM】 「この子はもはや、並の猛獣など蹴散らす力を備えているので、ひとりでも生きていけるでしょう。しかし、できれば、人間の手が届かない奥地に放ってやって欲しいです」
【シルヴィア】 人間がいちばん怖いからね。
【ティガー】 猫も一緒に来いよ。
【GM】 いや、この猫は、遺跡の許可された区域から出ようとすると、全身に激しい苦痛がみまわれるようになってるから、ちょっとムリ。
【ティガー】 パーフェクト・キャンセレーションのカードを使う。
【GM】 ……ちなみにそのカード、魔術師ギルドに持ち込めば、ジーネの借金など帳消しにできるぐらいの値段で、引き取ってもらえるんやけど?
【ティガー】 それはジーネが頑張る、ということで。
【メイユール】 わたしらが彼女の借金の面倒を見る必要なんか、ないやん。
【シルヴィア】 ティガーたちが貸主なんやしな(笑)。
【GM】 でも、やはり今は出られないらしい。黒猫が与えられた使命は、まだ果たされてないからね。
【ティガー】 使命って、この洞窟を守ることやろ。守りたいん?
【GM】 「私に呪いをかけた迷宮の作り手は嫌いですが、シフィルのことは好きなので」
【シルヴィア】 いったい、何を守ってるの?
【GM】 「『天の鍵』ですよ。あなた方も、あの金属盤で見ましたよね」と、黒猫。
「金属盤は、後で元に戻しておいてください」
【シルヴィア】 この金属盤をはずしておけば、『天の鍵』を誰かに盗られる心配はないよ。
【GM】 「資格あるものに渡すのが、私の役目です」
【シルヴィア】 なるほど。じゃあ、僕らがその『天の鍵』を取ってきてあげるよ。
【ティガー】 そしたら、洞窟の外に出れる?
【GM】 「まあ、役目終わったら、出れるかも知れませんが」
【ティガー】 とりあえず、ドラゴンを小さくしてしまおう。
【メイユール】 どうやって入れたらええやんろ?
【GM】 袋の口を広げてドラゴンの体に押しつけてやると、スルスルと入っていくらしいよ。ただ、中で暴れられたりしたら、袋は簡単に壊れてしまうけどね。
【シルヴィア】 じゃあ、「おとなしくしとけ」と言ってみるけど、言葉は通じるの?
【GM】 リザードマン語をしゃべれるなら。
【ティガー】 うわッ! 俺、しゃべれる。絶対、使わない言語と思って取ったのに、ショックや〜(泣)。
【メイユール】 ティガー、GO!
【ティガー】 じゃあ、ドラゴンに「暴れたらアカンで?」って言う。
【GM】 「何すんのん〜?」と、竜は言う。
【ティガー】 「すぐ、いいとこ行けるから」
【GM】 「いいとこって、どこよ?」
【ティガー】 「もっと、広いとこ」
【GM】 「なんで〜?」
【ティガー】 「だって、ここ、狭くないん?」
【GM】 「別に、ここでもええけど〜。バフー」
【ティガー】 「バフー」やあらへん(笑)。「もうじき、ここ、つぶれるよ?」
【GM】 「母ちゃんは一緒に行くん〜?」
【サテラ】 え? あの猫、雌?
【GM】 そう、じつは(笑)。
【シルヴィア】 母性本能でドラゴンの子を育ててたんやな。
【ティガー】 「自分がおとなしくしてたら、猫も一緒に行くから」
【GM】 「うん、わかった〜」と、インファント・ドラゴンは袋の中に入っていった。
 不思議なことに、あのドラゴンが入ったというのに、魔法の袋はパンパンにならならい。
【シルヴィア】 ちょっと、中を覗いてみよう。
【GM】 袋の中から見上げるドラゴンと目が合ったよ。
【メイユール】 不思議な構図や(笑)。じゃあ、外に持ち出そう。
【GM】 ところが、重くて袋は持ち上がらない。この魔法の袋、大きさは無視できるけど重さは無視できないから、インファント・ドラゴンの体重560kgはそのままなんやね。
【ティガー】 は?? どうやって持ち出すの?
【GM】 「大丈夫です。魔術師おふたりに、秘伝の魔法をお教えする、と言ったでしょ?」
【メイユール】 そういうことか。
【シルヴィア】 教えてもらいましょう。

男・ティガー、空を飛ぶ事

【GM】 ということで、サテラとシルヴィアは、黒猫から遺失魔法〈ディクリーズ・ウェイト〉の極意を授かりました。物体の重量を減らす魔法です。
【シルヴィア】 なるほど。
【メイユール】 じゃあ、その魔法を使って、ドラゴンを外に出す?
【シルヴィア】 その前に『天の鍵』を取って、猫を解放してあげよう。
【ティガー】 ドラゴンに「待っとけよー」って言う。
【GM】 ドラゴンは袋の口から顔を出して、「バフー」とか言ってる。
【シルヴィア】 で、「天の鍵はどこにあるの?」って猫に聞く。
【GM】 それを教えようとすると、体中に電撃が走るので、猫は答えられない。「見た目にだまされないでください」となら、言うことができる。
【ティガー】 また、幻影に隠された通路があるのかな。
【シルヴィア】 じゃあ、この部屋(F)への隠し通路の入口の対面の壁を、触ってみよう。
【GM】 どうやら、その壁も幻影のようです。
【ティガー】 おおっ。
【シルヴィア】 じゃあ、例の隊列で直進。ティガーはたいまつを持ってな。
【メイユール】 また、自分がいちばん後ろなんやな(笑)。
【シルヴィア】 なら、メイユールがしんがりをつとめるかい? バックアタックをくらうと、いちばん前ってことになるけど。
【メイユール】 遠慮しときます。
【GM】 さて、隠し通路を進んでゆくと、やがて、鉄製の扉にぶち当たります。固く閉ざされた鉄の扉には、なんだか南米の仮面のようなデザインの人面が、彫り込まれています。
 人面は目をつぶっていて、眠っているように見える。
【ティガー】 ぺちっ。
【GM】 「ほげっ」
【ティガー】 あはは、生きてる〜(笑)。
【GM】 人面は目を覚まし、寝ぼけまなこでキミたちを見る。「何よ?」
【シルヴィア】 「開けて」
【GM】 「しゃあないな〜、あーあ」と人面レリーフは言い、少し表情を引き締めた。そして、キミたちに尋ねる。
「汝らの求めるものは何ぞ?」ほげ〜。
【ティガー】 それさ、意味ないから、ずっとほげ〜っとすればええやん。
【メイユール】 なんで、そこだけキリっとすんの?(笑)。
【GM】 いちおう、仕事やから(笑)。仕事はキリっと、プライベートは自由に。
【シルヴィア】 じゃあ、「天の鍵、ほげ〜」と答える。
【GM】 すると、人面レリーフの目が赤く光る。重々しい音をたてて鉄の扉が開き、「汝らの前に扉は開かれた。いざ、進むがよい」と、言われます。
【メイユール】 じゃあ、入ろう。
【GM】 「がんばりや〜」ほげ〜。
【ティガー】 せめて、見えなくなるまでさ、仕事しろよ。

 扉の先には、下り階段があった。4人は地下2階へおりる。
 地下2階の通路を進んで行くと、目の前に、通路いっぱいの幅のプールがあらわれた。プールには水が張られている。

【GM】 プールの長さは6メートルぐらい。水の底は見えるよ。
【ティガー】 深さはどれくらいやろ。ツヴァイハンダーを入れてみる。
【GM】 ツヴァイハンダーは、ティガーの身長よりも長いもんな(笑)。
 深さは、1.2メートルといったところです。このパーティなら、誰も溺れたりしないでしょう。
【ティガー】 普通の水? 触ってみるけど。
【GM】 剣にも手にも、異常は起きないよ。ただの水のように思える。
 対岸から少し流れを感じるかな。よく見ると、両端に横方向のスリットがあって、そこから水が流れてるみたいです。押されたりするほど、強い流れじゃないけどね。
【シルヴィア】 底には何もないわけ?
【GM】 ただの石畳のように見える。
【ティガー】 入っちゃえ。たいまつを濡らさないようにして、水に入る。ドボン!
【GM】 なら、ティガーは[罠感知]してみ──1ゾロ? じゃあ、どうしようもないな。ティガーの胸や腹が、何か目に見えないものに斬られる。2点のダメージをくらった。
【ティガー】 「なんか、ここ、痛い。電気クラゲがおるかも!」
【メイユール】 なにぃ〜?
【ティガー】 どうしよう、戻ろっかな。……いいや、このまま向こう岸に行っちゃえ。
【GM】 ティガーの敏捷度は23か。じゃあ、ティガーは、その後切られることなく、向こう岸に上がることができた。
【メイユール】 それじゃあ、〈ウォーター・ウォーキング〉を使って渡ります。
【ティガー】 あれぇ??
【メイユール】 (ころっ)おっ、1と3。危ない。
【GM】 メイユールの呼びかけは、何とかウンディーネに届いた。「よく聞こえへんねんけど」などと言われながらも、水上歩行が可能になったよ。
【メイユール】 じゃあ、渡ってしまう。それじゃ、向こうに残ったふたりに──あっ、ゴメン。精神力が足りないから、あとひとりにしか使えへん。
【シルヴィア】 僕が〈レビテーション〉で浮いて、ロープで引っ張ってもらうとか。
【ティガー】 風船みたい(笑)。
【メイユール】 幅跳びはできへんの?
【GM】 試みることはできるけど、6メートルを跳ぼうとしたら、けっこう厳しいね。シルヴィアのレベルでも、荷物なしのチャレンジで、成功の確率は3割弱ほど。
【シルヴィア】 跳べるだけ跳んで、そこから歩いて行くよ。
【メイユール】 じゃあ、サテラには〈ウォーター・ウォーキング〉をかけようか?
【サテラ】 あ、はい。お願いします。
【メイユール】 (ころっ)成功。残りの精神力が2点や。フラフラやで。
【GM】 というわけで、サテラはプールを歩いて渡った。
 じゃあ、シルヴィアは走り幅跳びに挑戦してみ──それは、2メートル地点で落ちた。1Dを振って、偶数か奇数か教えて。
【シルヴィア】 (ころっ)偶数。
【GM】 そしたらシルヴィアは、背後から目に見えない刃で斬られた。その後、対岸に着くまでに、前からも斬られる。ダメージは、2点と5点。
【シルヴィア】 残り生命力が14点になってしまった。
【GM】 先に渡ったティガーたちの前に、水と血を滴らせたシルヴィアが、プールから上がってきた。
【メイユール】 えらいことになったな。
【シルヴィア】 血も滴るええ男。
【メイユール】 怖い、怖い。
【ティガー】 じゃ、先へ進んでみよう。

 冒険者たちは、部屋(K)にやって来た。
 そこは不思議な空間だった。
 背面に、石造りの壁と、入ってきた扉がある。足もとは、石塊だけがわびしく転がる、崖の縁。目の前に広がるのは、空もなく、底もない、どんより灰色に光る無窮の空間。

【メイユール】 なんじゃ、ここは。左右はどうなってるの?
【GM】 崖の縁が果てしなく続いてます。
【ティガー】 これは、飛び込んだら終わるかな?
【メイユール】 終わりたくないな〜。
【ティガー】 とりあえず、石ころを拾って投げ入れてみよう。
【GM】 そんなことしたら、どうなると思う?
【ティガー】 落ちて行くんとちゃうん。
【GM】 なら、ヒューと落ちていって、見えなくなった。
【ティガー】 ……? じゃあ、上にあがると思って、石ころを投げ入れてみる。
【GM】 すると、石ころは上に落ちていった(笑)。
【ティガー】 ここ、思ったとおりになるんちゃうん。「ヒデヨシ、飛べるぞっ!」
【GM】 男・ヒデヨシ、空を飛ぶ! ……ヒデヨシは「こけぇ」と、真剣に拒否してるよ。
【ティガー】 信じれば飛べるんちゃうん。
【メイユール】 飛べるの?
【ティガー】 行ってみようかなぁ。
【メイユール】 もう1回、石を投げて試してみよう。
【ティガー】 シュルルル、シャっ! って浮くように信じて、投げ入れてみる。
【GM】 じゃあ、シュルルル、シャっ! って浮いてるけど(どんな状態?)。ちなみに、ティガー以外のひとたちは、ティガーが投げ入れた石がどうなると思う?
【シルヴィア】【メイユール】【サテラ】 落ちる。
【GM】 なら、シルヴィアたち3人は、ティガーが何もない宙を見つめて、「石が浮いてる〜」と言ってるようにしか見えない。
【シルヴィア】 なるほど、ひとによって見え方が違うのか。おもしろい所やな。
【ティガー】 よし、飛べると思い込んで、飛んだ!
【GM】 それなら、精神力抵抗してみ。──すると、ジャンプしたティガーは、浮遊感に包まれる。フワ〜っと浮いて、自分の行きたい方向へ行けるようになったよ。
【ティガー】 そのまま正面へ飛んで行く。
【メイユール】 ティガーを見て、「うわー、飛んでる〜!」って思う。
【GM】 メイユールは、ティガーがすい〜っと飛んでるように見えるね。
【シルヴィア】 「うわっ、落ちた!」
【GM】 ティガーが崖から飛び降りて、はるか眼下の虚空へ消えたように見える。
【サテラ】 「すごいな〜」って。
【GM】 じゃあ、ティガーがすごく見える……どんな状態なんやろ?(笑) 振り向いたティガーの歯が──。
【ティガー】 ──キラっ!(笑)
【GM】 さて、ティガーは空中を気持ちよく飛んでいます。やがて、ティガーを包む浮遊感が消えて、キミは、あの遺跡と同じ造りの通路に立っている自分に気づきます。
【ティガー】 あれ?? 元の通路に戻った? あの電気クラゲのプールはある?
【GM】 いや、その通路には、プールはないよ。ティガーは扉の前に立っていて、たいまつが照らし出す薄暗い通路の奥のほうにも、扉が見える。
【ティガー】 誰か来うへんかな〜? ここで待っとく。

シルヴィア、鍵を手にする事

【メイユール】 わたしは、奥へ続く道が出現すると、思い込む。
【GM】 じゃあ、精神力抵抗してください。──それなら、メイユールの目の前に、陸橋のようなものが出現した。
【メイユール】 ダーっと走って渡る。
【GM】 メイユールは走ってるうちに、気がつくと、たいまつが灯る薄暗い通路に出ています。そこに、ティガーがいる。
 ティガーからすると、目の前の扉がいきなり開いて、そこからメイユールが駆け出てきたような感じやね。扉は、自動的に閉まります。

 続いてシルヴィアとサテラも飛んで行こうとしたが、サテラが思い込む心を恐怖に揺るがされ、気を失って落ちてゆく。
 しかし、一緒に飛んでいたシルヴィアが間一髪サテラを拾い上げ、何とかティガーたちの待つ通路へ出た。

【メイユール】 サテラが気づくまで、休憩しよう。わたしも精神力を回復させたいし。
【シルヴィア】 じゃあ、ティガーのソード・ブレイカーに、〈ライト〉をかけておこう。

 10時間ほど休憩し、魔法使いたちは精神力を回復させた。サテラも目を覚ましたので、4人は、通路の奥の扉を開けて中に入ることにした。
 そこは、部屋(L)。硫黄の匂いと、蒸せかえる熱気に満たされた部屋だった。
 冒険者たちの足もとは、部屋(K)と同じように崖の縁。しかし、すぐ目の前に広がるのは虚空ではなく、煮えたぎる溶岩の海だった。

【ティガー】 溶岩までの高さはどれくらい?
【GM】 10メートルといったとこかな。すさまじい熱気が噴き上がり、キミたちは、異様な暑さに汗をダラダラかいてます。
【メイユール】 ここは溶岩しかないの?
【GM】 いや、目測25メートルほど向こうに、足場があり、壁があり、扉がある。しかし、そこに至るまでは、一面溶岩やね。
 いちおう、かなり遠くに左右を挟む壁、頭上はるか高くに天井があるけど、これらは自然の岩壁で、人工的なものではないようです。
【ティガー】 今度は、思い込んでも飛べなさそうやな。とりあえず、上がると信じて石を投げてみるけど。
【GM】 石は溶岩の海に落っこちた。ジュッといって、石は溶けた。
【メイユール】 ダメか。どうやって渡ろう。
【シルヴィア】 シルヴィアひとりなら、〈シェイプ・チェンジ〉でフクロウに化けて飛んで行けるけど。荷物や装備を置いてけぼりにしていけばね。
【メイユール】 あのブリザードのカードを使う? 溶岩が凍るかも。
【ティガー】 じゃあ、溶岩に向けて使った。魔法のカードをちぎりながら、「ブリザード!」
【GM】 シュゴーっと直径10メートルの氷刃乱舞の竜巻が生まれ、溶岩の海で荒れ狂う。が、氷は次々解けていき、それでおしまい。それ、使い捨てやからね。
【メイユール】 ありゃ〜、1枚ムダにしたか。
【サテラ】 う〜ん……。
【ティガー】 あっ、ドラゴン! インファント・ドラゴンなら、溶岩も平気やん。ドラゴンに、向こうへ運んでもらうとか。
【シルヴィア】 なるほどな。〈ディクリーズ・ウェイト〉の持続時間以内に、あの部屋からここまでダッシュで来ることはできる?
【GM】 まあ、シルヴィアの敏捷度でも可能な距離かな。キミの人並外れた筋力なら、70kgの重さの物を持ってでも、それは可能でしょう。
【シルヴィア】 〈ディクリーズ・ウェイト〉を20倍消費ぐらいすれば、ひとりでも持ち上げれるな。精神力が足りへんけど、魔晶石をひとつ潰せば、何とかなるかな。
【メイユール】 じゃあ、行ってきて。

 シルヴィアは、幻覚の部屋(K)をやすやすと逆走クリアし、見えぬ刃のプールを負傷しながら突破し(前日のケガが治ってないので、死にかけた)、2本尻尾の黒猫とインファント・ドラゴンが待つ隠し部屋(F)に到着した。
 シルヴィアは、事情を話して猫の〈ディクリーズ・ウェイト〉の助けを借り、ドラゴンが入った無限の袋の重量を60kgほどにした。(猫の協力があったので、魔晶石は使わなかった)
 そして、袋をかついで、仲間たちが待つ溶岩の部屋(L)へ全力疾走する。これ以上、負傷できないので、見えぬ刃のプールは〈ファイアボール〉で破壊した。

【GM】 じゃあ、シルヴィアは溶岩の部屋(L)に帰ってきた。
【シルヴィア】 「あー、しんどかった〜」ちょっと休ませて。残りの精神力が1点やねん。
【メイユール】 この洞窟で、もう1泊するのか……。休むんなら、シルヴィアとティガーの傷を、〈ヒーリング〉で治してあげるよ。(ころっ)
【ティガー】 重さが元に戻る前に、溶岩にドラゴンを放しとこうっと。
【GM】 インファント・ドラゴンは、元のサイズに戻りながら、袋から出た。そして、羽をパタパタさせながらふわりと溶岩の海に降り、気持ちよさそうに泳いでます。「広いな〜」
【サテラ】 すごい……。
【ティガー】 こいつ、空を飛べるんや。
【GM】 さて、キミたちは再び部屋(L)の前の通路で身を休め、翌日を迎えました。
【ティガー】 ドラゴンに、「乗るから、向こう岸へ飛んでよ。向こうに行きたいねん」って頼む。乗れるやんな?
【GM】 まあ、子供といっても、体長が5メートルもあるからね。ドラゴンは、「飛ぶより泳ぎたいな〜」とか言ってるけど。
【ティガー】 ダメっ!(笑) 俺らを運んだ後、好きなだけ泳いだらいいから。

 冒険者たちはインファント・ドラゴンの背に乗り、順番に対岸へ運んでもらった。
 対岸に渡った4人は、さらに迷宮の奥へ向かい、部屋(M)に到着した。

【GM】 そこには、獅子の体に鷲の翼、美しい女性の顔をもった魔獣がいます。魔獣は侵入者をみとめると、のそりと起き上がった。
【メイユール】 UMAやー!(笑)
【GM】 UMAにしたくなければ、セージチェックをどうぞ──サテラとティガーが、そいつの知識を持ってたね。
 その魔獣は、スフィンクス。一般に、古代遺跡の宝物や貴重な知識の守り手といわれています。知恵と善き心の持ち主に、古代の財宝や知識などを伝えるため、謎かけをしてくることで有名。
【メイユール】 謎かけか、手ごわいな。
【GM】 「ようやく来たか」と、スフィンクスは言う。
「2泊もしおって。すっかり、待ちくたびれたぞ」
【シルヴィア】 なら、迎えに来てくれたらよかったのに。
【GM】 「それをしたら、知恵の試練にならんからな」と、スフィンクス。
「さて、問おう。謎かけではないぞ。ここに至った、汝らの心根を問うものじゃ」
【シルヴィア】 心を試されるの?
【メイユール】 やばいな(笑)。
【GM】 「銀の竪琴が慕うは金の笛、笛は地上で琴を想う。汝ら、笛を琴に届けるか、否か?」
 2択やね。答えはパーティで統一しといてな。
【ティガー】 じゃあ、いちど部屋の外に出て、ひとりずつ順番に入り直して、いろんな答えをしてみよう。
【GM】 地下1階の2本尻尾の黒猫からの情報で、スフィンクスは、猫に認められた侵入者のパーティ編成を把握してるよ。
【ティガー】 じゃあ、部屋の外に出て、シルヴィアが〈シェイプ・チェンジ〉でジーネとかに化ける。
【GM】 スフィンクスは、この迷宮での侵入者の行動を知ることができる。「2泊もしおって」と言ったでしょ? ……というか、しょうもないことに頭を使うな!(笑)
【ティガー】 「届けない」とか言うたら、怒られるんかな。じゃあ、ティガーは「はい」と答える。
【メイユール】 わたしも「はい」。
【サテラ】 わたしも「はい」……かな?
【シルヴィア】 じゃ、僕も。
【GM】 では、スフィンクスは「その言葉、たがえるでないぞ」と言い、何かぶつぶつと呪文を唱える。
 すると、奥に向かって右手の壁に、通路への出口が生じた。
「さあ、進むがよい。賢き者は、惑わされることはないだろう」
【ティガー】 あー、ムリやな。俺らきっと、惑わされる。
【メイユール】 じゃあ、通路を進む。
【GM】 キミたちは、隠し部屋に着いた。部屋の中央に、大きな宝箱がひとつ、ぽつねんと寂しそうに安置されてます。それ以外には、何も目につく物はないね。
【ティガー】 開ける、開ける。
【GM】 中には、不思議な光沢の金属盤が入っている。ゴルフなんかの景品で、自動車を獲得した選手が掲げるような、大きなキーをかたどった金属盤。
 下位古代語の文字で、『天の鍵』と刻まれています。
【シルヴィア】 取り出す。……とりあえず、掲げてみる(笑)。
【メイユール】 拍手する。「おめでとう、シルヴィア!」(笑)
【ティガー】 シーフ捜査! 宝箱をどけてみる。
【GM】 宝箱の下には浅いくぼみがあって、鎖が設置されている。どうやら、それを引っ張ると、隠し扉が開く仕組みになってるようやね。
【ティガー】 じゃあ、鎖を引っ張る。ジャラジャラジャラ。
【GM】 すると、隠し扉が開いて、奥へ続く通路があらわれた。
【ティガー】 よし、奥へ行こう。
【シルヴィア】 もう、この鍵は掲げんでええか〜?
【ティガー】 うん、もういいよ。
【メイユール】 いつまでやってんの? 逆に聞くけど(笑)。
【GM】 キミたちは、さらに奥の隠し部屋へ入った。そこにも、宝箱がひとつあります。その他には、何も見当たらない。
【ティガー】 じゃあ、その宝箱を開けてみる。

÷÷ つづく ÷÷
©2005 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2005 Jun Hayashida
Map ©2005 Moyo
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ひと言ありましたら
 
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