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§竜婚の贄姫:第8話§

竜の棲む島の怪

著:龍神裕義 イラスト:林田ジュン
▽ 額の瞳はダテじゃない ▽ 闇に浮かぶ竜の謎

額の瞳はダテじゃない

【GM】 さーて、それじゃあ、続きをやりましょう。謎の人物からの挑戦を受けたキミたちは、東にあるという廃墟の城を目指して旅立ったわけだね。ちなみにメンバーは、キバちゃん、フィナーレ、ロス、フィナーレの母親ディアーヌ。
【フィナーレ】 げっ、ママ同伴?
【GM】 そう、ついてきた。(かなり強引に)ついてきた。(決意は固く)ついてきてん!
【フィナーレ】 やだな〜。
【牙皇子】 GMの都合上、絶対についてくるってことだな(笑)。
【GM】 キミたちは川に沿って、鬱蒼と繁ったジャングルの中を進んでゆく。辺りは濃い霧に包まれ、3メートル先は何も見えない乳白色の世界である。
 そして、3時間は歩いただろうか。やがて立ちこめる霧は晴れ、ジャングルを抜けた。そこで一行が見たものは──!! この後、夜9時から! チャンネルはそのままで! ここでコマーシャル。
【牙皇子】 そんなのいいから、とっとと説明しろ。
【GM】 ちぇ〜。せっかく緊迫感を煽ろうと思ってたのにな〜。
【フィナーレ】 はいはい。説明してね。
【GM】 えっとね、ジャングルを抜けたキミたちが目にしたものは、小高い丘のてっぺんにポツリと立つひとつの城でした。
【牙皇子】 それが廃墟の城か。どんな城なんだ?
【GM】 「どんな」って……いままで見たこともないような城(笑)。目立つのは、屋根の上に立つ大きなドラゴンの彫像かな。
 その丘の周囲にはかつて街があったらしく、半ば雑草や木々に埋もれた瓦礫が、あちこちに散らばっている。倒れた柱、崩れた壁、どれを見てもこれまで見たことがないような素晴らしい彫刻やレリーフが施されているね。ここでフィナーレは、バード技能の[伝承知識]のチェックをしちゃってください。
【フィナーレ】 (ころっ)成功。
【GM】 そしたら、フィナーレはある伝承、詩を思い出します。その詩の内容は、ドラゴンたちと人間が共存していたという、ある国の物語。そこでは、ドラゴンも遺失の竜語魔法で人間と同じ大きさになって、人間と協力して文明を発達させていっていたと。ちなみに人間サイズになったときの姿が、そののち魔法帝国で人造される半人半竜のモデルになったらしい。
【フィナーレ】 それは何年ぐらい前なの?
【GM】 太古の昔(笑)。その詩を教えてくれたのは、フィナーレのバード技能の師匠である、ミゲル・インデュランというひと。
【フィナーレ】 勝手にあたしの過去が決まっていく。う〜ん、なんだかなぁ……。
【GM】 はっはっは、フィナーレの過去はとくに聞かされてなかったからね。プレイヤーがGMに告げてないことは、無いってことか、白紙ってこと。白紙ってことは、GMが勝手に作っていいってわけさ(笑)。
 ちなみにそのミゲルっていう師匠は、フィナーレが旅立つ直前に亡くなっている。
【牙皇子】 餅を喉に詰まらせてな。
【GM】 そう、先生はモチ呑みしててん。
【牙皇子】 ミゲル・インデュラン、新春隠し芸大会に散る。享年58歳。
【GM】 入ったらいいけど、詰まると苦しいらしいからな。フィナーレが思い出した詩は、その先生がモチ呑みする3日前に教わったもの。
【フィナーレ】 ほう、ほう。
【GM】 ミゲル先生はこう言ってました──。
【牙皇子】 ──「3日後、新春隠し芸大会がある。ワシの1年の成果を見せるときじゃ。が、胸騒ぎがする。万が一のときはフィナーレ、おまえがワシの後を継いでくれ」と。
【GM】 そんでフィナーレは、モチ呑みの奥義を究めたんやな。
【フィナーレ】 えっ、そんなコトできるんスか?
【GM】 できん、できん(笑)。ミゲル先生が言っていたのは、「ワシもワシの先生から多くの詩を学んだ。その伝承を胸に幾多の冒険をした。なぜだかわかるか?」
【牙皇子】 「そこに冒険があるからだ」
【GM】 ちゃう、ちゃう。「歌の真実を見極めるためだ。口先だけの歌なら誰にでも歌える。だがそれは、本当の歌ではない」
【牙皇子】 「歌とは心だ! ハートだ! ビートだ!! ハートビートだッ!!」
【GM】 「熱いハートを俺のビートで!」……いちいち話の腰を折るなよな。しかも、わけわからんし。「体験した者にしかわからない感動が、この世にはいくつもある。本当の歌を後の時代に伝える、本物の歌い手になれ」
【フィナーレ】 でもあたしィ、ソーサラーになりたかったしィ。
【GM】 「ゴホゴホっ、ああ? なんだって?? ワシャ、最近耳が遠いでのう。フィナーレ、おまえがここまで立派にくさって──」あぐぁ!
【フィナーレ】 腐って?!
【牙皇子】 そうか、そんで最近、こいつがそばに来ると腐臭がするんだな。
【フィナーレ】 するかぁー!! そんなもん! いい匂いなのっ!
【GM】 ホンマかぃ(笑)。「おまえがここまで立派に育ってくれて、この世に悔いはない。それから、歌はおまえの助けとなる。それだけは忘れるなよ」
 ここでフィナーレの回想シーンは終わり。目の前の現実に転じると、城門の前に、アイアイン・ゴーレムが一体立っているのが見える。どうやら、すんなりとは通してもらえないようです。
【牙皇子】 城の外見を教えてもらおうか。
【GM】 大陸の城とあまり変わらない、石造りの城だね。そんなに大きくはなく、見た感じ2階建て。デザイン的には、かなり古くさい感じがする。注意深く見てみると、最近手直ししたような箇所があるね。おそらく、この城も木やら雑草やら蔦やらに埋もれて朽ちかけてたんだろうけど、何者かが手入れしたと推測される。
【フィナーレ】 かばみこ(仮名)ね。
【牙皇子】 その城に、窓やバルコニーなどはあるのか? とくに2階部分。
【GM】 あるよ。
【牙皇子】 では〈ワイドウィング〉で翼を生やす。(ころっ)生えた。
【フィナーレ】 あたしはフライング・マントで空を飛ぶ〜。
【GM】 空を飛んで行くってか?! そんなんしたら、お母ちゃんやロスはどーすんの!
【牙皇子】 持っていく。
【フィナーレ】 持っていく〜。
【GM】 つーか、アイアン・ゴーレムの立場は!?
【フィナーレ】 知らな〜い(笑)。
【GM】 ……いいよ。2階のバルコニーに着きました。
【牙皇子】 そこから城内に侵入するぞ。

 4人は、まずは侵入した2階を探索し、大きなホールにやって来た。

【GM】 そこには、トロールが3匹います。
【牙皇子】 ホールって具体的にどんなホールなんだ? ここは2階だよな。玄関ホールではあるまい。
【GM】 だからやな〜、ここでパーティーしたり踊ったりしてたわけよ。
【フィナーレ】 その部屋はトロールがいるだけ?
【GM】 奥に扉がありますね。そこへ行くには、どうしてもトロールたちの真ん中を突き抜けなくてはなりません!
【牙皇子】 いったんホールを出て、別のところへ探索に行こう。城は広いんだ。無理してその扉を目指す必要はなかろう。
【GM】 いや、トロールたちはキミたちに気づいて襲いかかってきました! はい、フィナーレから行動してください(ゴーレムのときみたいに戦闘回避されてたまるか!)。
【フィナーレ】 強引だな〜。〈エネルギーボルト〉(ころっ)トロールAに13点、Bにクリティカルヒット18点、Cに抵抗されて13点。
【牙皇子】 トロールAに攻撃。(ころっ)命中、壱拾五点。
【ロス】 〈バルキリー・ジャベリン〉(ころっ)Aに18点、Bに17点、Cに18点。
【GM】 トロールAとBがやられた。トロールCはロスに攻撃しようとしたんだけど、何者かに背後から攻撃されて、死んでしまいました。
【フィナーレ】 何者!?
【GM】 トロールCが前のりに倒れると、その背後に立った人物の姿が見える。額に3つめの瞳があるという、そのとんでもない特徴に、キミたち──キャラクターたちには覚えがあります。かつて、リプレイにならない冒険で一度だけ、キミたちの仲間となったことがあるその男、いまはロスとともにキバちゃんの重臣となったその男、名をレイディアス。
【レイディアス】 みんな、大丈夫か?
【フィナーレ】 うわ〜、ずいぶんカッコよさげ(笑)。
【レイディアス】 ロス、心配をかけたな。牙皇子さま、ただいま戻りました。恐れながら、竜剣に関しての報告をさせていただきます。竜剣は、この城にいるある人物が持っているようでございます。
【牙皇子】 そんなこと、私もとうに知っとるわ。馬鹿者め!
【レイディアス】 も、申し訳ございません! しかし、竜剣を所持せしめる者の居場所を、このシーフの能力をもって、わたくしは突き止めてございます。あの扉の向こう、謁見の間に、その者はおりまする。
【牙皇子】 よし、じゃあ突入するぞ。
【ロス】【レイディアス】 御意!
【フィナーレ】 なんなの、このノリは?
【GM】 そういうわけで、レイディアスを加えたキミたち五人は、大ホールの奥の扉の前まで来ました。レイディアスが扉を開けます。軋んだ音を立てながら扉が開くと、中は、小じんまりとした部屋部屋でした。
【フィナーレ】 かばみこ(仮名)はいるの?
【GM】 その部屋の奥には玉座があり、そこに、黒いローブに黒いフードを目深にかぶった謎の人物が、座っています。
【牙皇子】 部屋に入ろう。先頭は露払いのフィナーレ。その後ろに横綱である私。そして私の背後に太刀持ちA右大臣のロス、太刀持ちB左大臣のレイディアスと続き、最後尾に腰巾着のフィナーレ・ママ。
【フィナーレ】 こ、腰巾着て……。
【GM】 そういう隊列で入るんだね。じゃあ、キバちゃんたちが部屋の真ん中まで来て、不知火型の土俵入をしてると、後ろで入ってきた扉がバタンと閉まった。そしてその瞬間、部屋の床一面がボコンと抜けた。
【牙皇子】 〈ワイドウィング〉(ころっ)生えた。そして空中でホバリング。
【フィナーレ】 同じくフライング・マントを着ているので、落ちかけて空中で静止。
【GM】 いいだろう。ただし、ロスとレイディアス、フィナーレの母親は落ちるからな。
【牙皇子】 フィナーレ、〈フォーリング・コントロール〉をかけてやれ。
【フィナーレ】 は〜い。3倍消費で(ころっ)かかった。
【GM】 床がボコっと落ちる──というより、床が開く罠が発動したけど、キバちゃんとフィナーレは空中にいて、他の3人はゆっくりと床に降りてきたわけだね。こいつら……。ちなみに開いた床は、もう閉まってます。キバちゃんもフィナーレも、落ちかけてから浮いたので、頭のすぐ上で天井が閉まったような感じになったんだね。
【フィナーレ】 じゃあ、もう中からは出れない?
【GM】 出れない。でも惜しいことしたなぁ。もう少し上に浮いてれば、閉まろうとした床に当たって、ダメージを受ける可能性もあったのに(笑)。
【フィナーレ】 何が惜しいんだか。
【牙皇子】 で、玉座にいた奴は?
【GM】 玉座ごと一緒に落ちてる。ただし、ローブの中身は木の人形だった。床で砕けて散乱してる。
【フィナーレ】 レイディアスに問い詰めよう。どーゆーことかな〜?
【レイディアス】 お、おかしい。確かにここにいたはずなんだ。その男と、他の奴らが話し合っているのを聞いたんだ。鍵穴から、この3つの目で確かに見たんだ(笑)!!
【フィナーレ】 3つの目か。それなら確かだろう(笑)。額の目は飾りじゃなかったんだ。
【牙皇子】 しかし、鍵穴を覗くのに使う目は1つでじゅうぶんのはずだが(笑)。

闇に浮かぶ竜の謎

【GM】 さてさて、落ちた先は石壁に囲まれた部屋ですね。むろん、天井はバカ高いけど。部屋の壁に、奥へ続く地下道の入口がひとつある。そして、フィナーレのお母ちゃんのディアーヌが、「そこから邪悪な気配を感じます」と言う。
【フィナーレ】 邪悪な気配……かばみこ(仮名)かな?
【牙皇子】 上に出れない以上、そこに行くしかないな。
【GM】 それでは地下道に入っていきます。地下道はまっすぐ伸びており、進んで行くと、やがて石でできた扉に突き当たった。
【牙皇子】 レイディアス、開けぃ。
【レイディアス】 はッ、わかりました。「開け、ゴマ」
【GM】 ガ〜って開いた(笑)。
【牙皇子】 ほう。なぜレイディアスは、その合言葉を知っていたのかな?
【フィナーレ】 やっぱり敵のまわし者だったんだ。敵に洗脳されてんだ。
【レイディアス】 いや、なんとなく言ってみただけ。
【GM】 ええねん、レイディアスやから。さて、その扉の向こうは真っ暗な部屋で、「この部屋の中央から、邪悪なものを感じる」と母ちゃんが言う。
【牙皇子】 真っ暗か。では、フィナーレは〈ライト〉、ロスとフィナーレの母親は〈ウィル・オー・ウィスプ〉を召喚。
【ロス】 〈ウィル・オー・ウィスプ〉(ころっ)出た。
【GM】 母ちゃんも〈ウィル・オー・ウィスプ〉を唱えました。
【フィナーレ】 〈ライト〉(ころっ)こんなところで6ゾロ出してどうしようというんだ、あたしは。
【GM】 明かりが灯ると、その部屋の奥隅に上へ昇る階段、中央に柩のようなものが安置されているのが見えた。
【牙皇子】 その中に入っているのは、恐らくバンパイアか『邪な土』だろう。フィナーレ、柩を開けて中身を確かめぃ。
【フィナーレ】 ロスに開けてもらおう。
【ロス】 フィナーレごときに命令される筋合いはないな。自分で開けるんだな。
【レイディアス】 俺たちはフィナーレに忠誠を誓っているわけじゃないからな。
【GM】 ──だそうです(笑)。
【牙皇子】 それに私は、フィナーレに命令したんだが?
【フィナーレ】 あうあう……。じゃあ、フタを取る。
【GM】 すると、中にはひとりのおっさんが寝ていた。おっさんの目がパッと開いて、フィナーレと視線がぶつかった。
【フィナーレ】 目をそらす。
【GM】 目をそらすの? それはケンカに負けたってことやな。
【フィナーレ】 どーせ、赤い瞳でしょ? マヒさせられたらヤだから、負けでいい。キバちゃんたちの方へ逃げる。
【GM】 すると、おっさんは柩から出てきました。そしてそれが、バンパイアであることが分かる。
【フィナーレ】 相変わらず[怪物判定]なしで名前を教えるのね。でも、いちおー[怪物判定]しとこう。(ころっ)
【GM】 レッサーではない、強いほうのバンパイアですな。かなり危険。危険度10。
【フィナーレ】 〈スケルトン・ウォリアー〉を作っても、じわじわやられちゃうだろーなァ……。よ〜し、〈ライトニング〉(ころっ)[精神力抵抗]されて15点。
【牙皇子】 バンパイアなら、銀製の武器が有効だな、持っててよかった、シルバー・マトック。銀のマトックで攻撃。(ころっ)はずれ。
【GM】 バンパイアはキバちゃんと同時行動なんだけど、今回だけは行動を最後に遅らせて、キミたち弱いザコの出方を見てる。
【レイディアス】 みんな、目をつぶってろ。『太陽拳』と書いて〈ホーリー・ライト〉! 天○飯、おめーの技を借りるぜ!(笑) (ころっ)
【GM】 ちょうど目が3つあるしな。じゃあ、その場にいるやつ全員[精神力抵抗]な。アンデッドであろうとなかろうと、まともに見たもの全員に目潰しの効果があるから。
【フィナーレ】 目、つぶってま〜す。
【GM】 アカ〜ン! まぶたを通り抜けて眩しいんじゃ〜。
【牙皇子】 しかし、ルールには掌から光を発すると書いてあるから、カメラのフラッシュみたいに向けられた所だけが眩しいのではないだろうか。
【GM】 ダメー、全員[精神力抵抗]。ええやんか、たかだか1ラウンドの間、目潰しくらったって(笑)。
【牙皇子】 まったく、しょうがないGMだ。(ころっ)[精神力抵抗]成功。
【フィナーレ】 (ころっ)[精神力抵抗]失敗、目潰しきた〜。
【ロス】 (ころっ)目潰しくらった。
【GM】 母ちゃんにも効いた。
【牙皇子】 これでバンパイアに効いてなかったら、レイディアスは袋叩きでタコ殴りにされてしまうな。
【GM】 だいじょうぶ、バンパイアにも効いたよ。
【レイディアス】 バンパイアには目潰し+ダメージがある。UUURRRYYYーッ! (ころっ)ダメージは12点。
【ロス】 俺は〈シェイド〉を5体召喚。目潰しのせいで当てられないから、呼ぶだけ。
【GM】 母ちゃんも目が見えてないので、〈シェイド〉を呼ぶだけ。で、バンパイアは目潰しで悶えながら「うわ〜! まさかこんな技を持っているとは……!!」。次のラウンド。
【フィナーレ】 あたしはまだ「まぶしい〜!」なので、[パリィ]。
【牙皇子】 銀のマトックでタコ殴り。(ころっ)クリティカル・ヒット、23点。
【レイディアス】 さっきうまくいったからなァ。もう1回、『太陽拳』〜!(笑)
【牙皇子】 まさにバカのひとつ覚え。
【フィナーレ】 これだから脳ミソまで筋肉野郎ってのは……。
【レイディアス】 ウソ、ウソ。〈ターン・アンデッド〉すればいいんだろ。
【GM】 それは効かないと思うなぁ。いちおう忠告だけど、バンパイアの[精神力抵抗]は高いんだから。
【レイディアス】 やってみなけりゃわからない。それっ、〈ターン・アンデッド〉ぉ! (ころっ)ほ〜ら見ろ、自動成功!
【フィナーレ】 鼻息が荒いぞ(笑)。
【ロス】 肝心なのはここからだ。
【GM】 そう、どういう効果が出るかが重要だね。
【フィナーレ】 いちばんいいのは『アンデッドは崩れさる』なんだけどなぁ。
【レイディアス】 (ころっ)『アンデッドは逃げ去る』か。
【GM】 じゃあ、バンパイアは霧になって逃げだしたよ。自らの邪な土を目指して。そしてそれは、その柩の中にあるのだよ!!
【牙皇子】 すなわち、邪な土の浄化を邪魔する者はいなくなったというわけか。それではレイディアス、しっかり頼むぞ。
【レイディアス】 お任せくだされ。@〓〒☆●§◎◇……カ〜ッ!!
【GM】 はい、浄化されました。黒っぽい土だったのが、気が抜けたように白っぽくなった。
【フィナーレ】 んじゃ、さっそく宝をあさらなくちゃ。
【牙皇子】 そうだな、バンパイアは光る物を集める習性があると聞く。
【GM】 烏か、このバンパイアは!(笑) とくに何も見当たらないよ。
【フィナーレ】 ちぇ〜。
【牙皇子】 それでは、奥の階段を上がって行こう。
【GM】 階段を昇ると、天井にあたる。けど、それは押して開けることができるんだね。そこから出ると、その先は部屋で、その床の中央に置かれてあった棺桶につながっていたらしい。そして、レイディアスが──。
【レイディアス】 あっ、この部屋は……!
【GM】 ──と、言う。
【フィナーレ】 見覚えあるの?
【牙皇子】 今度は確かなんだろうな。
【レイディアス】 この部屋は、前に来たことがあるんです。この部屋の奥に、城のボスがいつもいる部屋があるのです。
【GM】 ──と、奥のドラゴンのレリーフがある、豪華な両開きの扉を指さす。
【ロス】 今度はいかにもボスの部屋、って感じの扉なんだな。
【牙皇子】 それがボスの間の扉なら、罠はあるまい。突っ込むぞ。
【フィナーレ】 精神力を回復させたかったんだけど……。こんなところで寝るわけにはいかないからなぁ。
【GM】 扉を開けるんだね。そしたら、扉の向こうには、黒いローブに黒いフードを目深にかぶった人物がいる。今度は本物のようだ。
【レイディアス】 奴です!
【ロス】 奴か!
【牙皇子】 「久しぶりだな、かばみこ(仮名)。さあ、フードを取って顔を見せたまえ」
【GM】 その人物は「かばみこ? フッ、やはり、僕の名前すら知らないでいたんだね。まあ、いいや。そんなことより、やっぱりここまで来ちゃったんだね。さすがと言うか、血は争えないと言うか……」。
【フィナーレ】 あんたが呼んだから、来てやったんじゃないか。
【ロス】 さすがは『命令の指図』だな(笑)。
【GM】 黒ローブの男は、かぶっているフードを取った。そこからあらわれた顔は、キバちゃんに瓜二つだった。「僕は闇侈孫(やみひこ)」
【牙皇子】 闇侈孫??
【フィナーレ】 だっさ〜い。
【GM】 っていうか、そいつの顔はキバちゃんそっくりなんだよ。瓜二つ。まったく同じ顔をしてんねん。
【牙皇子】 だから、前に謎のダンジョンで会ったあいつだろ。
【フィナーレ】 コードネーム『かばみこ(仮名)』。
【GM】 ……そっくりやねん……。……「そんなに驚かなくてもいいよ」
【フィナーレ】 は??
【牙皇子】 む、虚しい……。状況見てアドリブきかせろ!
【GM】 驚いてんねん、キミたちはッ!
【フィナーレ】 そんなこと言ったって、前に一度あってるじゃない。じゃあ、握り拳を口もとにあてて、「え〜ッ!? キバちゃんがふたりいる〜?!」と叫んであげようか?(笑)
【GM】 そうそう。ロスも驚いてるねん。
【牙皇子】 ロスは確か、前のセッションで、私にそっくりな男に騙されたと言ってたぞ。
【フィナーレ】 言ってた、言ってた(笑)。
【GM】 ええねん、とにかくみんな驚いてんの!
【レイディアス】 苦しいなぁ。
【ロス】 このあたり、リプレイにするとき、なかったことにしたほうがよさげだな。
【牙皇子】 面白いから、しっかり書かれてあったりして。
【GM】 少なくとも、フィナーレ・ママだけは驚いてるよ。
【フィナーレ】 それならOK!(笑)
【牙皇子】 そんな中、私は不知火型でせり上がって来るんだな。で、かばみこは雲竜型で対抗するわけだ。
【GM】 するかっ!
【フィナーレ】 なんで土俵入りなんだ。
【ロス】 わけわからん。
【GM】 さて、闇侈孫は言うよ。「僕たちがそっくりなのは、当然さ。だって僕たちは、双子の兄弟なんだから」
【牙皇子】 出た、兄弟パターンだ。口調から推測するに、そっちが弟だな。
【GM】 「しかし、兄さんは(笑)みんなに歓迎される光から、僕は忌み嫌われる闇から生まれてきた」
【牙皇子】 どこが双子やねん!
【ロス】 真逆や、真逆!
【レイディアス】 あかん、キャラクターは真剣なのに、GMやプレイヤーはウケを狙ってしまってる。
【フィナーレ】 ってゆーか、キバちゃんが「光から生まれた」というのは……。
【ロス】 まるで、この世に神も仏もないことの証明のよーな。
【牙皇子】 ほほう(笑)。
【GM】 「兄さんが成竜となるための修行の旅に出るまで、僕は誰も知らない闇の部屋でたったひとりきり、育てられて来たんだ。仕方ないことなんだって。昔からの、双子に対するしきたりらしいんだ」
【牙皇子】 誰に聞いた、そんなこと。
【GM】 「そして、しきたりはもうひとつ。先に竜婚を行い、成竜となった方だけが竜の国に戻れ、もうひとりはすべての記憶を失い、人間としてこの世界で短い一生を終えねばならない。
 兄さんが冒険に出た日、僕もこの腐敗した世界に放たれた。……僕は、兄さんが僕という敵がいることを知らないうちに、成竜となってしまいたかった。兄さんを蹴落とすためにいろいろと小細工したんだけど、僕の計画は最初から暗雲が立ち込めていたんだよ」
【牙皇子】 闇侈孫なだけにな(笑)。
【GM】 「すべては、そこにいるの女のせいだよ」
【フィナーレ】 えっ、あたしのお母ちゃんのせい!?
【GM】 ちゃう、あんたやあんた。フィナーレや!
【フィナーレ】 わかってても言ってしまう、関西人の悲しさよ。
【GM】 「その女が兄さんと一緒にいなければ、僕の企みはうまくいってたんだ。成竜となった僕は、人間どもを支配して、楽しく暮らせていたんだ。……なんだい、フィナーレ。僕の顔をジロジロ見て。何か聞きたいことでもありそうだね」
【フィナーレ】 えっ、別にないけど。
【GM】 「なぜ自分が関係あるのか、って? いいよ、おしえてあげよう(笑)」
【フィナーレ】 別に聞きたいことなんてない、って言ってんのに(笑)。
【ロス】 キャラもプレイヤーも完全無視かぃ。
【牙皇子】 GMの独壇場だな。
【GM】 たまにはやらせてくれよ〜。「僕ら竜族には、昔から伝わる暦があるんだよ。その竜暦の中に、100年にいちど訪れる『ドラゴン・パールの日』というものがある。そして、僕らが成竜になるために行う儀式『竜婚』には、僕や兄さんが追い求めていた竜剣と竜杯の他に、ドラゴン・パールの日に生まれた人間とエルフの両方の血を受け継ぐ異性の生き血が、必要なんだ。
 ドラゴン・パールの日に生まれたハーフエルフの女、それがフィナーレ、キミなんだよ」
【ロス】 すんげーご都合主義。
【フィナーレ】 そんなご都合であたしは生贄になるの? キバちゃんはそのことを……。
【牙皇子】 知っていたさ(笑)。
【GM】 知ってたんかぃ!
【牙皇子】 だから、フィナーレを手元に置いていたのだ。
【レイディアス】 いま考えた。絶対いま考えた(笑)。
【フィナーレ】 う〜みゅ……そんなぁ。
【GM】 「兄さん、最後に笑うのは僕の方のようだ。僕が何の策も練らずに、ここに呼んだと思うかい? 奥の手があるからこそ、あなたを呼び寄せたのだ」
 闇侈孫が手を振るうと、フィナーレの母ディアーヌが、フィナーレの首筋にナイフを突きつけた。そしてレイディアスが、ロスをはがい締めにする。そいつらの腕には、怪しげなブレスレットがはまってるんだな。「こういうことさ、兄さん」
【フィナーレ】 ああ、やっぱり洗脳されてたのか。
【GM】 といったところで、今日はここまで。次回、最終回に続くぞ!
【フィナーレ】 なんつートコで終わるのー!?

÷÷ つづく ÷÷
©2001 Hiroyoshi Ryujin
Illustration ©2001 Jun Hayashida
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