≪REV / EXIT / FWD≫

§竜婚の贄姫:第3話§

北の風水の村の怪

著:龍神裕義
▽ 悪夢の転校生 ▽ 壺をめぐる攻防だコロン

悪夢の新入生

【フィナーレ】 今日は新しいお友だちが来ました。
【GM】 えっと、名前を教えてくれるかな。
【ロス】 ロス。
【GM】 よし、牙皇子とフィナーレのふたりが『サイレント・パブ』で食事をしていると、その酒場にロスがふらりと入って来たことにしよう。
【牙皇子】 ロスは転校生か。酒場のオヤジに紹介してもらわねばならんな。黒板に『ロス』と大きく名前を書いてもらわねば。
【GM】 そんで「席は〜……牙皇子くんの横ね」って言われるんだ。
【牙皇子】 そこへ行こうとしたら、脇から足を出されたりして。
【ロス】 そんでパタっとこかされるのか? でも、俺は目が悪いから、いちばん前の席じゃないと黒板が見えん。
【フィナーレ】 「目ぇ悪いから、席代わってやれ」って言われて、いちばん前の席を代わってやったのが、あたし。
【GM】 で、休み時間に給食費が入った袋とか無くなるねん。なぜか。ま、そんなことはどーでもいいとして、とりあえず、ロスは本当に紹介されたわけじゃないから、ふたりから離れたところで飯を食ってる状態。
【フィナーレ】 あたしは歌を歌ってお金を稼いでようっと。(ころっ)60フィス稼いだ。
【牙皇子】 よし、30フィスよこせ。
【フィナーレ】 そんなバカな!
【GM】 まあ、そうやって過ごしてるとね、キバちゃんのテーブルにひとりのオヤジがやって来た。「キミたち、手練の冒険者のようだが、ひとつ頼まれてくれないかね?」
【フィナーレ】 話を聞いてみる。
【GM】 そのひとは、道具屋のウルバーンってひとね。「ある壺を配達してほしいのだが」とのことです。
【フィナーレ】 また、壺?
【牙皇子】 なんで配達なんかに、冒険者が雇われなくてはならんのだ。
【GM】 「じつは、この壺を持っていると、よく盗賊に襲われるんです。なぜだかわからないけど、盗賊どもはこの壺を狙っているようなのです。でも、ま、この間この壺が売れましてね、北に『風水の村』っていう村があるんですけど、そこの道具屋と売却の契約を結んだのです」
【フィナーレ】 中は何が入ってんの?
【GM】 何も入ってない。からっぽ。
【フィナーレ】 〈センス・マジック〉で調べる。(ころっ)。
【GM】 〈センス・マジック〉しても、魔法のオーラは感知できない。壺の大きさは、高さ30センチの幅25センチぐらい。そんなに大きくないね。ま、見た目は普通の壺だけど、下のほうにちょっと、ドクロの模様が入っていると。
【ロス】 きっと、骨壺だ。
【牙皇子】 なんで骨壺の表面にドクロのマークを入れるんだ。
【GM】 まるわかりでいいな、それは(笑)。ま、道具屋がいうには「なぜこの壺が狙われるか、わたしにはよくわかりません」と。
【フィナーレ】 ふ〜ん。店にあったとき、そういうことはなかったの?
【GM】 2週間前、仕入れたときから、狙われるようになったらしい。
「そんなわけで、こっちとしても、こんな壺は早く売ってしまいたかったのです。このたび、めでたく売れましたが。それで、北の風水の村まで届けてほしいんですけど、ちょっと遠いし、途中盗賊に襲われるかも知れないので、冒険者に配達を依頼しようと思ったわけです」
 ちなみに、風水の村まではそんなに遠くないから、馬車で4日か5日ぐらいで着く。
【牙皇子】 馬車代はオヤジが払うんだな。
【GM】 「いや、それはちょっと……」。馬車を使うか歩いて行くかは、オヤジにはわからないんだから。とりあえずそういう旅費も含めて、依頼料は2000フィス。
【牙皇子】 ひとり頭な。
【GM】 はあ?!
【フィナーレ】 そんで、馬車を使うのはいくらかかるの?
【GM】 えっと、片道でひとり350フィス。往復券で乗るなら、ちょっと安くなって500フィス。
【フィナーレ】 道は安全なの?
【GM】 まあ、広くて整備されてるから、モンスターが出ることはまずないでしょう。よし、「じゃあ、馬車代はこっちで持ちます」とウルバーンは言うよ。でも、依頼料はひとりに2000フィスじゃないからね。全員で2000フィスだから。
【牙皇子】 全員で2000フィスじゃ私たちは困るのだ。
【フィナーレ】 3人で割り切れないからね。
【GM】 はあ、3人か(いつの間にロスは仲間になったんだろう)。じゃあ、2400フィスということで。
【牙皇子】 惜しいなぁ、2700フィスならなァ。
【GM】 2700じゃ、割り切れへんやん。
【フィナーレ】 割り切れるよ。
【牙皇子】 いやいや、GMの言うとおり割り切れないということで、3000フィスで手を打とう(笑)。
【ロス】 それなら割り切れるぜ、きれいに。
【GM】 「――ちょっと……ソロバン叩かしてくれ」
【牙皇子】 おう、いくらでも叩け。その結果、報酬が3300になっても、我々はいっこうにかまわんぞ。
【GM】 だんだん増えてるやん。「ああ、早く届けてほしいしな。じゃあ、報酬は3000フィスということで。それから馬車代もこちらで負担します。前金として500フィスを渡しておきましょう。向こうで証明書にサインしてきてもらったら、残りの2500フィスを支払います」
【フィナーレ】 サインを書くための紙は? 収入伝票とか。
【GM】 ああ、別にそれは何でもいいよ。大黒帳の切れ端みたいなんでも渡しとくから、そいつに向こう側のサインを書いてもらってきたら、残りの報酬を支払おう。
【フィナーレ】 いいかげんな店ね。サインをちゃんと管理しないなんて。
【GM】 それはだって、そのサインで商売してるわけじゃないから。今回はとりあえず、品物を受け取ったからどうかの確認のためのものであって。
【フィナーレ】 ふ〜ん。
【GM】 「引き受けてもらえますか」
【牙皇子】 じゃあ、カーテンの後ろから「許可してやれ、フィナーレ」と言う。
【GM】 いつの間にカーテンが……。
【ロス】 なに、影の悪役なん(笑)?
【牙皇子】 そう。膝に猫のせて撫でてて、片手にワイングラス持ってて、顔の上半分は闇に隠れて見えないようにしてある。
【フィナーレ】 その猫は、あたしの使い魔(笑)。
【牙皇子】 この酒場はすでに、私仕様に改装されている。ドライアイスもたかれてるし。
【GM】 勝手なことを。さて、ウルバーンはキミらが3人組やと思ってるから、「では、3人でよろしくお願いいたします」と言う。
【フィナーレ】 さあ、ロスはどうやってパーティに入ってくんのかな?
【ロス】 どうやって入ろう。わかった、「その話に乗るぜ!」。
【フィナーレ】 「──というわけでヨロシク〜」って、すんなり入ってくんのね。
【GM】 ざっくばらんなパーティだ。とりあえず、風水の村の商人に手渡すのは、1週間以内。帰りは別に遅くなってもかまわない。「ま、帰ってこなくてもいいけど」
【ロス】 帰ってこなかったら、壺を渡したかどうかわからんぞ。
【フィナーレ】 パクって逃亡するって手もあるね。
【GM】 でも、盗賊に狙われるかも知れないぞ。
【ロス】 大丈夫、自分らで売り飛ばすから。
【フィナーレ】 それに雇われたけど、名前は知られてないし。
【GM】 悪魔やなァ、キミら。でも、冒険者リストってのがあるから、調べればすぐに身元は割れるよ。
【牙皇子】 私のファイルはオープンできないぞ。「アクセスは拒否されました」って出るから。ちなみに私のコードナンバーは『666』。
【ロス】 魔の獣かぃ。
【牙皇子】 みろく菩薩と呼んでくれ。
【GM】 キバちゃんのどこを押せば菩薩になるんだか。ウルバーンは「じゃ、1週間以内に届けてくれ」と言って、壺をキミたちに渡して去っていった。もちろん、壺は袋に包まれてるよ。
【フィナーレ】 そいつはロスに持ってもらおう。
【ロス】 げっ、重たいな〜。荷物持ちかぃ、俺は〜。
【フィナーレ】 えっ、だってキバちゃんはカーテンの後ろだしィ、あたしはひ弱だしィ。
【GM】 ロスの筋力はいくら?
【ロス】 8。いちばんひ弱なんだけど、俺……。
【GM】 それもう、イジメ受けてんのとちゃうの。
【ロス】 かも知れんなぁ〜、後ろの席から消しゴムがばんばん飛んでくる感じ(笑)。
【GM】 で、出発はいつにするわけ? ちなみにいまは夜。馬車は明日の朝8時ぐらいに出る。
【ロス】 なら、朝まで宴会!
【牙皇子】 新入生の歓迎パーティだな。
【GM】 いいなァ、そういうの。
【フィナーレ】 ほんじゃ、酒場で歌を歌って飲み代を稼ぐ。(ころっ)…いっきに126フィス稼いだ。
【牙皇子】 それで酒場中の人間におごるわけだな。
【フィナーレ】 でも、酒場の客から巻きあげたお金で、客におごるというのもなぁ。矛盾を感じるけど、おごりきってしまおう。
【GM】 酒場のオヤジが「おおっ、新入生が入ったのかい。まあ飲みねえ」と、酒を持ってくる。キバちゃんは知っている。その酒が1本300フィスもすることを! しかも、後でしっかり金を取られていることも。
【牙皇子】 その代金を支払うのは、フィナーレの役目だ。そのためにこいつは歌うのだからな。
【フィナーレ】 え?? 300フィスもおごれないよ。
【GM】 もうみんな飲んでる(笑)。「おごる」って言ってしまったからな。
【ロス】 10回ぐらい歌えば大丈夫。
【GM】 ま、そういうわけで翌朝になった。
【フィナーレ】 おお、すごいな。昨日の300フィスの酒代が、あやふやなままどっかに行っちゃったぞ。
【牙皇子】 フッ、我々は踏み倒しの常連だからな。
【フィナーレ】 だから、ブラック・リストに載るんやんか!
【ロス】 で、出発するわけね。
【牙皇子】 うむ、駅に行くぞ。
【GM】 駅に行くと、馬車はすでに用意されていた。牙皇子さまがお乗りになられるということで、わりと立派な2頭だての幌馬車です。キミたちが「道具屋のウルバーンの依頼だ」と言うと、御者が「話は聞いています。どうぞ乗ってください」と答える。
【牙皇子】 ほう、手回しのいいことだ。ちゃんと黒のカーテンも張ってるし。
【フィナーレ】 そうなの?
【GM】 そりゃ、牙皇子さまがお乗りあそばされるんだから(笑)。そんなこんなで、キミたちは馬車に揺られ、北にある風水の村へと旅立った。順調な旅かと思われた2日目のお昼ぐらいのこと、急に馬車がストップしてしまった。
【牙皇子】 フィナーレに様子を見に行かせる。
【フィナーレ】 待ってたら、御者のひとが何か言うはずだよ。
【GM】 そうすると、御者が幌の外から顔をのぞかせ、「いやぁ、馬が何か変な殺気みたいなのを感じてるみたいなんですよ。一歩も前に進まない」と言う。
【ロス】 鞭うてー! 暴走させぇー!
【フィナーレ】 とりあえず、表を見てみるかな。幌から顔を出す。
【GM】 すると、前方に人影が3つ立っている。ひとりは女性で、ふたりが男性。
【牙皇子】 こっちと同じか。
【フィナーレ】 すごいな。ドッペル・ゲンガーだ。
【GM】 ちゃうがな。相手はけっこうスラっとした女性、男の片方はすごい筋肉質で、もう片方はヒョロっとした背の低い奴。そいつらは、キミたちのほうに歩いて来るよ。
【牙皇子】 降伏を勧告する。「死にたくなくば、そこで止まれ」
【GM】 でも、3人組はそれを無視して馬車の近くまでやって来た。リーダーらしい女のひとが前に出てきて、「悪が呼んだか血が叫んだか、我ら悪玉3人トリオ! おまえたちが持ってる、その袋に入った『ドクロの壺』をお渡し!」と言う。

壺をめぐる攻防だコロン

【ロス】 わかった、渡せばいくらくれる?
【牙皇子】 降伏する気か?
【ロス】 いや、壺を渡して金をもらって、そんで後ろから殴るんでしょう。
【フィナーレ】 うお〜、スゲぇー!!
【GM】 しかし相手は、「素直に渡すんなら、命だけは助けてやるわ」と言う。金を渡す気なんて、ないようだね。
【牙皇子】 「そっちこそ、素直に身ぐるみ置いて消えるなら、右足だけで勘弁してやる」と言ってやる。
【フィナーレ】 どっちが追剥なんだか。
【GM】 女リーダーは妖艶な顔を歪ませて、「このマージュ様をなめるなんて、どうやら死にたいらしいね。オボッケー、ドンゴロー! やっておしまい!」と叫んだ。すると、2人の男が前にズンっと出て、剣を抜いて突進して来たよ。
【フィナーレ】 距離はどのくらい?
【GM】 そうだね〜、走って3秒ぐらい。
【ロス】 すぐそばじゃないか。
【フィナーレ】 じゃあ、ダメもとで〈スリープ・クラウド〉。(ころっ)ああ、今日は出目が悪いなぁ。
【GM】 ドンゴローっていう、ごつい男のほうがパタっと寝ました。
【ロス】 そんじゃあ、ヒョロっとした男に攻撃しよか。(ころっ)6点のダメージ。
【牙皇子】 戦闘はロスとフィナーレに任せる。私は馬車の奥、カーテンの後ろで猫を愛でて眺めている。
【GM】 じゃあ、次のラウンド。とりあえず、マージュという女リーダーは、自分の道具袋から木のワンドを取り出した。オボッケーはロスに攻撃してくるよ。
【ロス】 (ころっ)6ゾロ、自動的に回避。悪知恵と悪運は強いな。
【フィナーレ】 〈チャーム〉の呪歌をはじめよう。
【ロス】 オレ、耳栓持ってないんですけど。手で耳を塞ぎながら、戦えと?
【牙皇子】 呪歌は効果が出るまで4ラウンドもかかる。だからロスは、3ラウンド目までは普通に行動して、4ラウンド目になったら耳を塞げばいい。
【ロス】 そうか。
【牙皇子】 とにかく、私は耳栓をしよう。これでフィナーレの呪歌は効かない。
【フィナーレ】 いや、じつはわたしの呪歌は脳に直接響くのだよ(笑)。
【牙皇子】 こら。私は観戦。「おまえら、しっかりしろ」
【ロス】 また、細い奴でも刺しとくか。1匹ずつ殺していくのが正解だろう。(ころっ)あれっ、スカ。
【GM】 次はマージュの番。マージュはワンドを振った。すると、さっき眠ったドンゴローがムクリと起きあがるよ。
【フィナーレ】 そんな魔法あったっけ?
【GM】 さあね。特別なワンドなのかも知れない。眠った奴が起きて、敵は3人になったよ。第3ラウンド目いきますよ〜。
【フィナーレ】 あのさ〜、〈ハードロック〉の魔法で扉が開かないようにして、みんなで馬車に立てこもるってのはどうでしょう。
【牙皇子】 ……それでどうするんだ? 火をつけられたら終わりだぞ。
【フィナーレ】 そうしたら、外に出るんだよ。
【牙皇子】 馬鹿か! なら、最初から敵を殺したほうが手っとり早いだろう。
【フィナーレ】 だったら攻撃してよ〜。
【牙皇子】 ほう、誰に口を利いてるつもりだ? 黒幕である私に向かって、そんな口の利き方が許されると思っているのか? ドライアイスの煙がモワ〜っとそっちに流れていくぞ。
【フィナーレ】 ドライアイスて……。とりあえず、呪歌続行。
【牙皇子】 私はカーテンの奥で猫を愛でる。
【ロス】 じゃあ、また細い奴に攻撃。(ころっ)命中、8点。
【GM】 悪玉トリオの番だね。「やばいことになっちまったわねぇ、アレを出すよ!」とマージュが言い、3人は茂みの中に隠れた。そして次の瞬間、そこから戦車みたいなのが、ガガガガガっ、ガガガガガっ、って出てくる。
【ロス】 おいおい!
【フィナーレ】 タ○ムボカン・シリーズを思い出させてくれる。
【GM】 板で馬車を囲んで装甲にしている戦車だね。そいつには、バリスタが7門、クロスボウが12門、突進のための槍が3本と、豊富な武装がすべて、前方に向かってのみ装着されている。ちなみに、動力源は馬1頭。
【フィナーレ】 馬1頭じゃ、ぜったい動かせないって。
【牙皇子】 何せ1馬力だからな。それに、すべて前方に向けての武装なら、背後に回れば怖くともなんともないわけだ。
【GM】 とりあえず、戦車はさっそうと出て来たんだが、武器がそっちに向いてなかったので、方向転換をしようとしているよ。次のラウンド。
【フィナーレ】 4ランド経った? そろそろ〈チャーム〉の効果が出るんだけど。
【牙皇子】 しかし、相手は聞き続けてなかったと思うぞ。
【GM】 一度逃げたしな。それに今は戦車の中だ。いまのところ、効いてる様子はないね。
【フィナーレ】 そうか。じゃあ、反転している間に燃やしちぇえ。
【ロス】 燃やすもの、あるか?
【牙皇子】 あるぞ。油とほくち箱が。
【GM】 ほくち箱を使おうと思ったら、めっちゃ時間がかかると思うぞ(笑)。とにかく、その戦車がそっちに向いたら、バリスタが鬼のように飛ぶと思ってくれ。
【牙皇子】 ふむ。動力源を潰せたらいいのだが。
【GM】 馬はもちろん、装甲に覆われてるよ。
【フィナーレ】 じゃあ、どうやって動力源が馬だってわかったんだ。
【GM】 「ヒヒ〜ン」って鳴き声がしたのさ。
【ロス】 誰かニンジンを持ってないか? ニンジンをあさっての方向になげて、馬を暴走させるんだ。
【GM】 そんなマンガのような攻撃をするわけやな。でも、馬は囲われてるから見えんと思うぞ。
【牙皇子】 しょうがないな、誰かに『メカの素』を食わせて対抗するか。
【GM】【フィナーレ】【ロス】 はあ?!
【GM】 バリスタはキバちゃんの乗ってる馬車の方にかなり向きだしてきたよ。
「このまま一気に叩き潰しちまいな!」「アイアイサー!」「ぼちっとな」。やるー、やるー、やるー、やる〜♪ やられるぞ、きっと、な。
【牙皇子】 ロス、油を戦車に投げてくれ。私はカーテンを引きちぎって、〈ファイアブレス〉で火をつける。フィナーレは使い魔にそのカーテンをくわえさせて、戦車に火をつけろ。
【ロス】 それなら、直接〈ファイアブレス〉で戦車に火をつけたほうが、いいんじゃいか?
【牙皇子】 いや、黒幕である私は、カーテンの奥からおいそれと動くわけにはいかんのだよ。
【GM】 でも、それだと使い魔の猫ごと燃えだす危険があるぞ。
【フィナーレ】 げっ。
【牙皇子】 大丈夫。〈キュアー・ウーンズ〉で治してやるさ。
【フィナーレ】 でも、リシュは嫌がってるよ。「うお〜っ! やめてくれぇ、やめてくれぇ〜!!」と、脳に直接響いてくるゥ〜! 使い魔の声がァ〜。
【ロス】 油を投げるぞ〜。(ころっ)。
【GM】 いいだろう。戦車に油の入った瓶が当たって、そこでパリンと割れて、油が飛び散った。
【牙皇子】 それじゃ、カーテンをちぎって、火種を作る。
【フィナーレ】 リシュは「ふぎゃあ〜!!」って鳴きながら、それをくわえて戦車に特攻。あ〜あ、なにやってんだか。
【GM】 猫は戦車の油の染みついたところに、体当たりした。すると、戦車は一瞬にして火に包まれたよ。
【フィナーレ】 とりあえず、リシュを迎えに行こう。彼女の方から駆け寄ってくるでしょ。
【牙皇子】 猫まっしぐら。ソファの後ろから、バッと飛んで出てくる。
【ロス】 いいなァ〜。
【GM】 その前に、とりあえず敵のラウンドな。燃えだした戦車は、マージュたちが「あ〜ッ、どうしよう!」と言っている間に、装甲がボロボロはげてくる。すると、猫が体当たりしたところのすぐ近くに、何かボタンがあるのがわかる。
【牙皇子】 猫、ボタンを押してみろ。
【フィナーレ】 リシュは嫌がってる。嫌がってるんだがァ〜。影の総帥が「やれ」と言っているので、しかたがない(笑)。
【GM】 猫はボタンを押すんだね。まあ、その時点ですでに、猫の毛はなくなってしまってると思ってくれ(笑)。
【フィナーレ】 うわ〜、最悪だ〜。
【牙皇子】 勇敢な猫ではないか。畜生の分際で火を恐れぬとは。後で私から、何か称号を与えてやろう。
【GM】 戦車の中から声がする。「奴ら何かボタンを押したよ!」「大丈夫ですよ、マージュさま。あれは、この馬車が乗っ取られた時のための、外部自爆装置です」
【牙皇子】 では、放っておいても死ぬということだな。
【GM】 次の瞬間にズガーンと大爆発が起きて、戦車は粉々になり、3人は爆風でどこかに飛ばされてしまう。「おぼえてろよ〜、その壺は必ず手に入れてやるゥ〜!」「全国の女子高校生のみなさ〜ん、ラブレターちょうだ〜い!!」
【ロス】 で、煙がドクロ?
【牙皇子】 例の女のワンドはどうなった?
【GM】 マージュが持ってるから、一緒に飛んでいってしまったよ。後に残っているのは、粉々になった戦車と、ヘロヘロになった馬と、毛のない猫。
【フィナーレ】 〈キュアー・ウーンズ〉で治してくれるんでしょ?
【GM】 いやぁ、ケガは治るが毛までは治らんよ。しばらくは肌色の猫ってことで。
【フィナーレ】 うう〜、そんなんダサすぎるやん。 
【ロス】 とりあえず、あいつらのヘロヘロの馬でももらっていくか。少しは役に立つだろう。
【GM】 わかった。じゃあ、次の日の夕方、キミたちは風水の村に着いた。村に入ると、し〜んと静まり返って、人の気配が感じられないことに気づく。
【牙皇子】 フィナーレの猫に偵察に行かせよう。
【ロス】 猫使い荒いなァ。
【フィナーレ】 そのために〈ファミリアー〉で召喚したんじゃないのに〜。さすがにリシュは嫌がるわ。
【牙皇子】 ほう、いい度胸だ。
【ロス】 三味線行きかァ?
【GM】 とりあえず、1軒だけ明かりのついている家があるよ。そこは、宿屋なんだけどね。
【フィナーレ】 声は聞こえるの?
【GM】 聞こえない。
【フィナーレ】 人影は見える?
【GM】 ちょっと見えないね。
【牙皇子】 じゃまくさい。中に入る。
【フィナーレ】 「すいませ〜ん。どなたか、いらっしゃいませんか〜」
【GM】 すると、カウンターの奥からお婆さんが姿を現した。「こんな村に来るとは……。何の用じゃ」
【フィナーレ】 「かくかくしかじか」というわけで、商人を探してます。
【GM】 「ほう、それは残念じゃったねえ――」
【ロス】 ――「ワシが食っちまったよ」
【GM】 ちゃうちゃう! 「この村のモンは、3ヶ月前から、ひとりひとり順に消えていっちまったんだよ……。そして、とうとう誰もいなくなってしまったんだ。わたしを残してね。あんたたち、はよう帰ったほうがいいぞ」
【フィナーレ】 消えた?!
【牙皇子】 それはいいから、食事の用意をいたせ。
【GM】 はあ、まあ食事ぐらいは出るけどね。
【ロス】 気をつけないと、毒が入ってるかも知れないぞ。なんか、怪しい村だし。
【牙皇子】 猫に毒味させるか?
【GM】 「ほう、猫かい? わしゃ猫料理は得意じゃ。しかし、こいつはまた、毛のない変な猫じゃの」
【フィナーレ】 うるさい〜。
【牙皇子】 とりあえず、村人が消えたわけでも聞いてやろう。話せ。
【GM】 じゃあ、お婆さんは語りだす。「じつは3ヶ月ほど前、ある集団がこの村にやって来た。そいつらは、この村の近くに塔を建てたのじゃ」。ま、塔と言ってもそんなに大きなものじゃないけどね。
【フィナーレ】 でも1階建てじゃ、塔とは言わないでしょ。
【牙皇子】 そんなもん、ただのアジトやんけ。
【GM】 そこまで小さくないって。「そいつらは、怪しげな呪文でモンスターどもを操り、何かを探しているようじゃが――」
【牙皇子】 その呪文はぜひ、覚えたいな。
【GM】 「人手が足りなくなったらしく、この村の者をさらって、そこで働かせているのじゃ」
【ロス】 それって、『消えた』んじゃなくて、『さらわれた』んじゃないか。
【牙皇子】 3ヶ月も前から事件が起きていて、どうして助けを呼ばなかった?
【GM】 そいつらの力を恐れてたんだね。
【牙皇子】 ウルバーンと契約したこの村の道具屋が、その時ついでに助けを呼べばよかったのに。
【フィナーレ】 そうそう。それに、ウルバーンもこの村の異変に気づかなかったの?
【GM】 いや、契約したのはキミたちがいるメカリアの街だから。その道具屋はあちこち旅してて、久しぶりに村に帰ってきたところを捕まってしまったと。
【牙皇子】 なるほど。――で、私たちにどうしてほしいのだ、婆さん。
【GM】 いや、だから「こんな村に来たってどうしようもないぞ」と。
【ロス】 じゃあ、引き返すか? あ、でもそれじゃ、ミッション失敗になるからなァ。
【牙皇子】 6000フィスで、そいつらの退治に行ってやってもいいぞ、婆さん。私たちは冒険者なんだし。
【GM】 「わしゃ耳が遠いでのう(笑)。ま、久々の客じゃ。夕飯ぐらいは、サービスせんでもない」と言ってる。「それはそうと、奴ら、何かの壺を探しているみたいじゃったがのう。何でもその壺を使うと、願い事がひとつだけ叶うらしい。この近くの墓場に埋まっているらしいんじゃが……なんだったかなァ、ガイコツ……いや、スケル……ドクロ、そう、『ドクロ・ツボーン』じゃった」
【フィナーレ】 それはやはり、あの骨ツボもどきのことでは。
【牙皇子】 かも知れん。なるほど『ドクロの壺』とは、そういう壺だったのか。
【ロス】 よ〜し、使ってみよう。「ババァ、呪文とか教えてくれ」
【GM】 「はあ、なんのことじゃ?」。このお婆さんに、そんな話が通じるはずがないじゃないか。
【ロス】 役立たずめ。
【フィナーレ】 他に情報はないの?
【GM】 とくになさそうだね。お婆さんは「ドクロ・ツボーン、ドクロ・ツボーン」とつぶやきながら、隣の部屋に入っていく。で、バタンとドアが閉まって、中から包丁を研ぐような音が聞こえてくる。
【牙皇子】 こういう展開の時は、悪人じゃない。ババァは我らの味方だ。
【フィナーレ】 何の料理を作ってくれるのかな?
【GM】 お婆さんが包丁を持ったまま出てくる。「おぬしら、カエルの内蔵は喰うか?」
【フィナーレ】 食べないッ!!
【ロス】 いや〜、カエルの姿焼きならともかく……。
【GM】 「スープの隠し味はコウモリでいいかの?」
【ロス】 う〜ん、おいしそうやなァ。
【牙皇子】 すごいエルフがいるぞ、そこに。
【GM】 ま、そーゆー食事をすませて、その晩はこの宿屋で眠って、次の日の朝になったよ。ってところで、続きは次回ということにしよう。
【フィナーレ】 いったい……どーゆー食事だったんだか。

÷÷ つづく ÷÷
©2000 Hiroyoshi Ryujin
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