≪REV / EXIT / FWD≫

§短編[2]§

未来への遺産

2000年11月19日Crazy Heavenオープン例会 / 著:龍神裕義
▽ 冒険のはじまり ▽ 地下遺跡の探索 ▽ 新種発見

冒険のはじまり

【GM】 それでは、始めましょうか。
 ときはレムリア暦541年、舞台はオムスク地方メカリアです。
 そんじゃね、簡単にキャラを紹介してください。
【プレイヤー1】 え〜、名前はヒクソスで、グラスランナーの男。シーフと、レンジャーと、おまけでバードを少々。
 装備は、ダーツ、スモール・シールド、クロースで。
【プレイヤー2】 ランディ・アクアマリンで、人間、男。戦神オーシュのプリーストで、セージと、ファイターも採ってます。
 ロングスピアにスモール・シールド、チェインメイルを装備してます。
【プレイヤー3】 ドワーフ男性のガルドです。ファイター、ノプスのプリースト、セージ、レンジャーを1レベルずつ。あと、一般技能のクラフトマンは、建築家を選択しました。
 モールと、ロング・ボウ、チェインメイルが装備です。
【プレイヤー4】 カイン。人間、漢(おとこ)。ファイターを2レベル……だけ。
 ラメラー・アーマーを着込んで、グレート・ソードを持っとります。このグレート・ソードを買うために、借金しました(笑)。
【プレイヤー5】 そのお金を貸したのが、あたし(笑)。
 人間の女で、名前がトルマ・リン。シャーマン、ファイター、セージ、レンジャーを1レベルずつです。
 装備は、ショート・スピアにハード・レザーです。
【プレイヤー6】 知力が一般人以下で字が読めない、ミュンヒハウゼン。人間、男です。呼び名は“ミュン”です。
【トルマ】 ドイツっぽいね。ドイツ好きなん?
【ミュン】 嫌いだけど、このキャラにふさわしい病気の名前でこんなのがあったから、使っただけ(笑)。
 レンジャーが2レベルで、あと、バードと、身のほど知らずにセージがついてきます。
 武器は、ヘビー・クロスボウ、鎧はハード・レザーです。
【GM】 ほい、じゃあ、最後のひと。
【プレイヤー7】 名前はジーナ・フォレーストでハーフエルフの女。セージが2レベルで、あと、ソーサラーとバードが1レベルずつ。
 メイジスタッフと、クロースが装備です。
【GM】 えー、皆さんすでに知り合いということで、よろしいですな?
 7人で連れ立った皆さんは、えっちらおっちらと旅をしてきて、いま、メカリア王国の王都メカリアに到着したところです。
 時刻は夕方、お約束というやつですな。
【カイン】 宿屋探しってことですな。
【ジーナ】 うっ、そんなこと言われると、意地でも行きたくなくなるなぁ。
 街の外の森にでもおるわ、わたし。
【GM】 いちおう、街の北側に森があるよ。
【ジーナ】 その森の入口あたりで、野宿します。明日の朝、広場に集合ってことで。
【トルマ】 じゃあ、あたしらは宿屋へ行こう。
【GM】 そうして訪れた宿屋は、1階が酒場で2階が宿泊施設という、ごく普通の宿屋。ただひとつ違うところは、扉を開けてみると、酒場はグラスランナーですし詰めになっているのです。
 なんでも、近々、グラスランナーの音楽祭があるらしい。
【ミュン】 グラスランナーがすし詰めって、なんかイヤだな〜。
【カイン】 それより、ここに泊まれるのか?
【GM】 いや、残念ながら満室とのこと。カウンターの奥から、オヤジがすまなそうに謝ってきます。
【ヒクソス】 それはしゃあない。よそに行く。
【GM】 次に入った宿屋では、こんどはドワーフがすし詰め状態。しかも、全員、男ね。
 なんでも、近々、ヒゲ自慢コンテストがあるらしい。
【ランディ】 さっきより強烈……(笑)。
【ガルド】 ボクにとっては、そうでもないですが?(笑)
【GM】 ここも空き室はないとのことで、皆さんは別の宿屋をあたってみました。
 すると、こんどはエルフがすし詰め。近々、蹴鞠大会があるそうな。
【トルマ】 蹴鞠って。公家じゃあるまいし。
【GM】 エルフたちは、
「おお、くさや、くさや」
「くさいと思うたら、なんと、人間でおじゃる」
「たれぞ、香を炊いてくれたもう」とか言うてるよ。
【カイン】 ん〜、公家だなぁ。
【ガルド】 ボクにとっては、こっちのほうが強烈。さっさと別の宿屋を探しましょう。
【ランディ】 残りは、ハーフエルのすし詰めかな?
【GM】 そのとおり。大勢で酒を飲みながら、誰かが発狂するまで、不幸自慢に明け暮れるらしい。
【トルマ】 どんなんや(笑)。
【ヒクソス】 で、けっきょくどこにも泊まられへんの?
【GM】 いや、ようやく、空いてる宿屋を見つけたよ。
『サイレント・パブ』と斜めに傾いた看板もわびしい、裏路地の宿。表通りの喧騒から切り離されて、〈サイレンス〉がかかったような静けさです。
 いちおう、弱々しい明かりは灯ってるから、営業はやってそう。
【ミュン】 場末の酒場か……まあ、空いてるでしょうな、それは。
【カイン】 ここしかないんなら、入るしかないな。
【GM】 皆さんが宿屋に入ろうとしたとき、ちょうど、店から女将さんが出てくるのと鉢合わせました。
 女将は、皆さんの姿を見て冒険者だと悟ったらしく、「ああ、ちょうどよかったよ」と、嬉しそうに言い、「どーぞ、どーぞ、お入りなさい」と勧める。
【ガルド】 じゃあ、入りましょう。
【ランディ】 そして、お仕事の話ですな。
【GM】 そのとおり。女将さんは、冒険者の店に行って、仕事の依頼をしようとしてたところやったんやね。ここもいちおう、冒険者の店なんやけど(笑)。
【カイン】 閑古鳥ってやつですな。
【ヒクソス】 仕事の話は、メシを食いながらってことで。
【GM】 では、皆さんは思い思いの注文をし、女将自ら作り運んでくれた食事をとりながら、話を聞きます。
 依頼内容は、ずばり人探し。女将さんの夫、このサイレント・パブの主の捜索です。
 この店のご主人は、昨日、出かけてから帰ってきてないらしい。
【ガルド】 オヤジさんは、どこに出かけたんでしょうか?
【GM】 え〜、メカリアの街の北に広がる森の中、徒歩で2時間ばかり行ったところにある古代遺跡を利用した、サイレント・パブ専用の食料庫です。
 皆さんも、野営の途中で体験したんですが、いまから2日前に大きな地震がありました。
 オヤジさんは、倉庫が崩れたりしてないか心配になり、様子を見に行ったらしい。
【カイン】 そんなに大きな地震やったん?
【GM】 そうですね、大きかったです。場所によっては、橋が落ちたぐらいの規模でした。
【ミュン】 んで、その倉庫に行くまでに、モンスターとか出るの?
【GM】 とくに危険なものはいませんね。たまにでっかいカブトムシが出現するだけ。もっとも、カブトムシはあまり人を襲うことはないけど。
【ランディ】 カブトムシだけに、きっと夜行性だろうな。
【カイン】 そうすると、ジーナの寝込みにやって来るかもな。
【ジーナ】 いいの。襲われないように、火、焚いとくもん。
【GM】 明かりにつられて、余計に集まってきたりして(笑)。
「そういうわけなんで、お願いできますか?」
【ヒクソス】 そういうのは、自警団に相談すべきやな。
【ガルド】 自警団に相談されたりしたら、我々の商売が成り立ちませんよ。
【ランディ】 おまんまの食いあげですな。
【カイン】 つまり、これは「内々に処理したい」ということだ、と判断しておこう。
【トルマ】 そんな大げさな(笑)。
 で、報酬はいくらぐらい?
【GM】 パーティに1000フィス支払うそうです。
【ヒクソス】 7人で割り切れんな、それでは。
【GM】 つーことは、ここに血で血を洗う抗争が勃発するわけやな。……ってことになると、この酒場にも被害が及びそうなので、成功報酬1050フィスという提案がなされるよ。
【ガルド】 ひとり150フィスですね。
【トルマ】 それなら、OKよん。
【GM】 それでは、交渉成立ということで。よろしく。
【ヒクソス】 む〜、ひょっとして、1400フィスぐらいに吊りあげられてたかも。
【カイン】 成功報酬ってことやけど、どの時点で成功になるん?
【GM】 オヤジを連れて帰ってきたら。もしくは、死体か、とりあえずオヤジだとわかる物を持って帰ってきてくれたら。
【カイン】 そのどちらともが不可能な場合は? 完全に行方不明とかで……。
【GM】 その場合、前金として渡す105フィスが、パーティへの報酬ということで。
【トルマ】 ずいぶん少なくなるなぁ。
【GM】 だって、そうなったら、今度は「行方不明者の捜索」で、キミらか別の冒険者に仕事を頼むことになるから。
【ランディ】 ちなみに、オヤジさんの特徴は?
【GM】 年の頃は51。ハゲてて、ヒゲもじゃらしい。
【ミュン】 知力7のミュンは、それを「丸くてピカピカしててヒゲが生えてるもの」と、記憶した。
【GM】 とりあえず、仕事を引き受けてくれたということで、「今夜の食事と宿代はサービスしとくよ」とのこと。
【ジーナ】 ……それも報酬の中に含まれてるよーな気がするなぁ、なんとなく。「サービス料」とかいって。
【ランディ】 報酬に含まれてるなら、サービス受けとかないと損だね。
「これでひとっ風呂浴びたら、すっきりするだろうなぁ」
【カイン】 おっ、いいね〜。長旅の疲れが吹っ飛ぶ、ってもんだ。
【GM】 お風呂もサービスしましょう。オムスク地方の湯浴みの習慣は、現実の日本に似てるんで、キャラクターは出身によっては違和感あるかも知れないけど、プレイヤーには想像しやすい。
【ガルド】 仕事は明日から、ですね。
【GM】 皆さんは風呂に入り、ぐっすり眠って疲れを癒し、翌朝を迎えました。
 朝メシもサービスで出ます。
【ランディ】 それを食ったら、街の広場でジーナさんと合流だな。
【ガルド】 仕事のことを話さないといけませんしね。
【ミュン】 「広場に行って、何するの?」……って、言ってそうだな、ミュンは(笑)。
【カイン】 「あー、いいからついてきなさい」
【GM】 では、広場でジーナと合流しました。
 広場には、グラスランナーがわんさかいて、音合わせやら、発声練習やらで、朝から賑やか。
【ヒクソス】 その中に紛れとこか。
【ジーナ】 紛れたって、一発でわかるよ。茶筅髪を引っぱって、連れ戻そう。
【ヒクソス】 ああ〜。髪を引っぱるのはやめて。
【ミュン】 そんなジーナさんに、「僕たち、丸くてピカピカしててヒゲを生やしてるものを、探しに行くんだよ」と、教えてあげる。
【ジーナ】 「丸くてヒゲの生えたもの?? ……ナマズだろうか」って、ちゃんと教えてくれないと、延々悩んでるよ(笑)。
【トルマ】 じゃあ、「かくかくしかじか」とちゃんと事情を説明して、「オヤジを探しに行くぞ〜」と言う。

地下遺跡の探索

【カイン】 その森の中の倉庫までの道筋は、わかってるの?
【GM】 聞いてたことにしましょう。一本道なので、そこからはずれなきゃ、迷うことはまずありえない、とのこと。
【ミュン】 それでも僕は迷うかもね。
【ランディ】 んじゃ、手をつないで出発しましょうかい。
【GM】 それでは、出発しました。
 北の森の中をさまようこと2時間弱、(ころっ)突然、進行方向左手側の茂みが、ガサガサと揺らぎます。
【カイン】 ワンダリング・モンスターか?
【ヒクソス】 おびえる。
【ミュン】 弓矢を構えて、警戒する。でも、モンスター以外のものかも知れない。ウサギとか。
【GM】 そう、茂みから出てきたのは、獲物らしい毛の長〜いウサギを手にした、ひとりのグラスランナーでした。
 そのグラスランナーは、「遅れる、遅れる!」と言いながら、メカリア方面へ去って行きました。
【ランディ】 そいつは、時計を見ながら走ってませんよね。「女王様のお茶会に遅れる!」とか、言ってませんよね(笑)。
【ジーナ】 とすると、下手に追いかけると、穴ボコに落ちてしまいそう(笑)。去ってしまったんなら、無視して先に進もう。
【GM】 先に進むと、やがて森が開け、小高い崖が見えてきました。
 そのふもとにポッカリ口を開けてるのが、噂に聞いたサイレント・パブの食料庫の出入口でしょう。
 ちなみに、その出入口の10数メートル手前の地面に、どっかり大きな穴が開いております。
【ミュン】 不思議の国に続いてるのかな?
【ガルド】 ひょっとしたら、オヤジは、あの大穴に落ちたのかも知れませんね。レンジャー技能で足跡を調べてみます。(ころっ)
【GM】 ガルドは、人間の男性大の足跡を見つけました。どうやら、地面の穴を迂回して、倉庫の入口に向かっているようです。
 ちなみに、足跡はもうひとつあって、人間の子供大の足跡が、地面の穴の中に続き、またそこから出てきてます。
【ミュン】 その穴ってのは、人工的なものか、自然に開いたものかわかりませんか?
【GM】 自然ですね。陥没した、って感じ。そんなに深い穴ではなく、落ちた土砂が斜面を形成してます。北に向かって下ってる、って感じね。
【カイン】 小さな足跡は、そこを歩いていってるのか。
【GM】 そう。穴の底の北壁には、人間が3人ばかり並んで歩けるような大きさの横穴があり、小さな足跡は、そこに入って出てきてるようです。
【ジーナ】 それってやっぱり、あのグラスランナー?
【ランディ】 でしょう。
【ガルド】 オヤジは倉庫に向かってるみたいなんで、この穴は後回しにしませんか。
【ランディ】 それに賛成。
【トルマ】 足跡を追跡して行きますよ。
【GM】 了解。では、倉庫にやって来ました。
 入口には鉄の扉があって、普段は南京錠みたいなのもので鍵をかけてるらしい。いまは、鍵ははずされ、扉も開け放たれてるけどね。
【ランディ】 足跡が、そこから出てきた様子はありませんか?
【GM】 ありません。
【ミュン】 それじゃ、照明を用意して中に入ろう。

 冒険者たちは、倉庫(かつての古代遺跡)内のオヤジのものらしき足跡を追跡した。
 ところが、その足跡は、床が崩れて大穴を開けている箇所へと続いていた。

【ジーナ】 対岸というか、わたしたちがいる所の正面は、どうなってますか? 通路の続きがある?
【GM】 いや、暗視能力を持つガルドならわかるけど、向こうは壁も崩れてて、下にも横にも大きな空間になってるみたい。通路の続きらしきものは、見えないね。
【ランディ】 とりあえず、小石を拾って穴に落としてみよう。これで深さを計る。
【GM】 すると、手を放してだいぶ経ってから、「カツン」という音が返ってきた。けっこう深そうです。
【トルマ】 つまり、ここは、落ちる以外に進む手段はない、ってことやな。
【ミュン】 ……落っこちるのは、『進む手段』とは言わない。
【カイン】 それに、10メートル以上はありそうだから、落ちると、120%の確率で死ぬと思うよ。
【トルマ】 じゃあ、オヤジはどうなったん? ここに落ちたんなら、死んでるんとちゃう?
【カイン】 あるいは、通路の向こうに行ったときに床が落ちて、帰ってこれなくなってるのかも知れない。
【ガルド】 ただ、向こうには何もないようですし。床ごと落ちた可能性もありますね。
【ランディ】 で、途中で引っ掛かってるとか。
【カイン】 とりあえず、穴の底を確かめたいな。
【ジーナ】 すみませんねぇ、もう少しレベルが高ければ、〈フォーリング・コントロール〉が使えたんだけど。
【ミュン】 やはり、表の大穴の横穴が、ここの下に続いてるのかなぁ。確かめに行ってみる価値はあると思う。
【ヒクソス】 じゃ、行く〜。
【ランディ】 横穴の感じは、どうですか?
【GM】 人工的な地下道みたい。多少、土砂が入り込んでるけど、奥に続いてます。
【トルマ】 ここは、さっきの倉庫と比べてどう? 同じような造りですか?
【ガルド】 ボクの建築家技能を使って、判定してみます。(ころっ)
【GM】 そうですね、非常に似た造りです。使われている石材の加工のされかたまで、似ています。
【カイン】 ガルドに言わせると、「これはまさしく同じ職人の技だ!」って感じですな。


 冒険者たちは、地下の遺跡の奥を目指した。
 そして、遺跡の床に残されていたグラスランナー大の足跡を追跡し(そのおかげで、白と黒の市松模様の床の部屋(G)に仕掛けられた落とし穴を、簡単に回避)、部屋(H)にたどり着いた。
 そこには、開け放たれた宝箱がふたつ、壊された宝箱がひとつあった。

【ミュン】 あのグラランが開けたんだな。
【GM】 開いてる宝箱の中身は、からっぽです。ちなみに壊れた宝箱からは、変な液体がパシャ〜っと溢れ出てたりする(笑)。
【ヒクソス】 液体?!
【ジーナ】 それはあの〜、いわゆるミミックさんですね。セージ技能で調べるよ、(ころっ)。
【GM】 予想どおり、それは、チェスト・イミテーターの死骸です。
【ヒクソス】 元モンスターやな。

 冒険者たちは、さらに遺跡の探索を続け、部屋(F)にやって来た。

【GM】 その部屋にも、宝箱が3つあります。今度は、どれも蓋が閉まってます。
【トルマ】 さっきの感じからすると、ひとつがイミテーターかも知れない。イミテーター感知とかできんの?
【ヒクソス】 何よ、イミテーター感知って。
【カイン】 シャーマンの[センス・オーラ]で、感知できるんじゃないの。……生き物だったら。
【ガルド】 いや、魔法生物に[センス・オーラ]しても、生命の精霊は感知できませんね。
【トルマ】 じゃあ、どうする?
【カイン】 火をつけろ!
【GM】 そりゃあ、木の箱だからよく燃えるやろね。でも、その後トレジャー発見しても、「なに、この炭化した物体は」ってことになるかもよ(笑)。
【ランディ】 とりあえず、オレは部屋の出入口付近で槍を構えて、様子を見てるから。
【ミュン】 それを見て、わけもわからないまま弓矢を用意する。
【ジーナ】 石を投げつけたら、イミテーター動くかしら。
【ガルド】 何に反応するようセットしてあるかによりますね。
 とりあえず、ボクも武器を構えて、イミテーターに備えます。
【ジーナ】 やって損はないだろうから、まずは石を投げてみよう。誰かコントロールいいひと、投げて。
【ミュン】 はいはい! 江夏、投げます!(笑) 第1球、スライダーで。(ころっ)
【GM】 見事に命中。跳ね返った石は、コロコロと床に転がります。
【ミュン】 反応はなし、と。続いて第2球、第3球。(ころっ)
【GM】 どちらも命中。しかし、やはり反応はないですね。
【ヒクソス】 予想どおりやな。んじゃ、真ン中の宝箱を不意に開ける。
【GM】 開きました。中には、野球ボール大の銀色の金属製の玉が、ひとつ入っとります。
【トルマ】 どういう用途で使うんですか?
【カイン】 砲丸投げ!
【ミュン】 丸かったら、投げるものだ(笑)。
【ジーナ】 〈センス・マジック〉してみようか?
【カイン】 いや、それは後にしよう。とりあえず、誰か筋力のある人に持っててもらおう。
【ガルド】 じゃあ、ボクが持っておきます。
【ランディ】 宝箱は、あとふたつか。
【ヒクソス】 右の宝箱を、スパっと開ける。
【ジーナ】 罠チェックも何もなしに、よくやるわ。
【GM】 宝箱の中には、さっきのと同じような大きさの、金色の金属製の玉がひとつ入ってます。
【ミュン】 丸くてピカピカしてるんだけどな〜。ヒゲが生えてない。
【ランディ】 宝箱は、あとひとつ。
【ヒクソス】 中身は、銅の玉か、イミテーターやな。
【トルマ】 銅?? あっ、これってひょっとして、オリンピックのメダルちゃうん!
【GM】 ……玉や、っちゅーとんねん。
【ランディ】 それに、まだ、中身が銅と決まったわけじゃないしね。オレは、イミテーター臭いと思うな。
【ガルド】 じゃあ、モールで一発殴ってみましょうか。
【トルマ】 中身を壊したらアカンよ。壊したら、弁償ではすまんよ。
【GM】 誰に弁償すんねん(笑)。
【ジーナ】 素直に開けよーよぉ。
【ヒクソス】 んじゃ、今度は罠チェックしてから、開ける。
【GM】 それではまず、[危険感知]……それは失敗ですな。
 ヒクソスが、罠チェックしようと宝箱に手をかけると、おもむろに蓋が開いて、中から毛むくじゃらのマッチョな腕が出てきて、パシっと殴りかかってきた。
 マイナス4で回避ね──って、回避された。
【ヒクソス】 グラスランナーをなめたらアカンわ。
【カイン】 やはり、イミテーターだったか。
【GM】 これで第1ラウンド終了。第2ラウンドから、敏捷度順で処理していきますよ。
【ヒクソス】 こんな近くから、ダーツ投げたるで。(ころっ)当たった。
【GM】 しかし、蓋が閉まって、ガイーンと弾かれた(笑)。
【カイン】 グレソで斬る! (ころっ)クリティカル・ヒット、17点。
【GM】 そうすると……宝箱は砕け、腕やら謎の臓物やらが、イヤな匂いの液体とともに、パシャ〜と流れ出た。
【トルマ】 何にもする間がなかった。
【ジーナ】 もとから何もするつもりなかったけど、ホントに何もせずにすんだ。
【カイン】 とりあえず、ひと言。「ぬるいな」
【GM】 そのとおり。剣が体液でヌルヌルになっとりますわ。
【カイン】 いや、そーゆー意味じゃなくて(笑)。

新種発見

【ミュン】 イミテーターは、何も持ってないのかな。誰か、調べてみない?
【ランディ】 あんなグロい中を調べるの? オレはイヤです。
【ミュン】 もちろん、僕だってイヤさ。
【トルマ】 誰でもイヤじゃ!
【ジーナ】 みんなイヤだから、あえて触れないようにしてるんだな。
【GM】 調べてみたら、保存食を見つけたりして(笑)。
【ヒクソス】 そうなると、誰が食うかが問題やな。
【ランディ】 食いたくねー!
【カイン】 そんなの食うぐらいなら、死んだほうがマシじゃあ!
【ジーナ】 ってゆーかさぁ、なんで、食べる必要があるの(笑)。

 冒険者たちは、さらに遺跡の奥を目指した。
 すると、またしても床が白黒の市松模様になっている大部屋(E)があった。
 今度の部屋には、落とし穴はなく、かわりに、人間大の金色の戦士像と、銀色の戦士像が4体ずつ、金の戦士は奥向きに、銀の戦士は入口向きに、置かれてあった。(図参照)

【トルマ】 あっ、チェスや、チェスや! ポンポンポンポンポン……。
【ヒクソス】 チェスにしては、駒の種類が……。
【ランディ】 戦士だから、ぜんぶポーン(笑)。
 ちなみに、その戦士像は動かせそう?
【GM】 いや、完全に固定されてますね。押しても引いても、動かない。
【カイン】 何かをはめ込むような窪みとかある?
【GM】 この像には、そういうのは見当たらない。
【ヒクソス】 とりあえず、先へ行ってみよう。

 この部屋(E)を後にした冒険者たちは、部屋(C)と部屋(D)で、さらに金の玉、銀の玉を2つずつ獲得した。この際、チェスト・イミテーターとも2回戦闘し、撃破している。
 そして、冒険者たちは、部屋(B)にやってきた。

【GM】 奥に扉が見えますね。そして、その扉の両脇には、禍々しい悪魔の石像が2体あったりします。
【ヒクソス】 それはまさに動きそうやな。
【ジーナ】 ガーゴイルかと疑ってるんですね。セージ技能で、チェックしてみますよ。(ころっ) 
【GM】 それなら、そいつがガーゴイルだとわかりました。
 ただ、これが何をきっかけに動きだすかは、わからない。
【ヒクソス】 ドア開けたときやろ。
【カイン】 まあ、ガーゴイルだとわかったんだし、動きだす前に、壊すことも可能でしょう。
【ランディ】 構造物の破壊ね。
【ミュン】 でも、攻撃したとたん、動きだすかも知れないよ。
【カイン】 そしたら、普通に戦う。どのみち、破壊しないことには、扉の向こうに進めそうにないし。
【トルマ】 じゃあ、ショート・スピアを投げてみる。ひょっとしたら、動きだすかも知れんから、みんな戦闘準備じゃ〜。
 (ころっ)当たった!
【GM】 でも、石材なので、スピアでは破壊できない。トルマのスピアは、カーンと跳ね返って床に転がる。
【ジーナ】 〈エネルギーボルト〉なら有効ですよね。使いましょうか?
【ランディ】 いいですね。魔法なら、アレに近づかずにすむ(笑)。
【ミュン】 でも、精神力がもったいないと思うよ。後で魔法が必要になるかも知れないし。
【ガルド】 それなら、ボクが〈トランスファー・メンタルパワー〉してもいいですよ。ドワーフだから、精神力余ってるし。
【ミュン】 そしたら、今度は回復がなくなるよーな……。
【ランディ】 だいじょうぶ、オレもプリーストだから。
【ジーナ】 じゃ、左のやつに〈エネルギーボルト〉をかけるよ。(ころっ)7点。
【カイン】 敵は動きそう?
【GM】 別に反応はない。ただ、ヒビが入っただけ。
【ミュン】 でも、怖いなぁ。壊れたとたん、石像の中から毒ガスが吹き出るってことがあるかも……。
【トルマ】 そこまで陰険じゃないやろ。
【ヒクソス】 GM、「その手があったか!」って顔をしない(笑)。なに、いま、シナリオに手を加えようとしてんの?
【GM】 ンなことするわけないがな(笑)。

 で、とくにシナリオの変更もなく、2体のガーゴイルは、見せ場もなく散華した。
 そして、扉の向こうに進んだ冒険者たちは、部屋(A)に至った。
 目指すオヤジは、そこにはいない。
 かわりに、白と黒の石でできた台座が25かざり、白黒交互に配置されてあった(図参照)。
 台座には、金銀の玉と同じ大きさの窪みがある。
 その窪みに玉をはめ込むのだ、ということは容易に察することができたが、台座の数に対して、玉の数がかなり少ない。
 はたして玉の取り残しがあるのか、台座へのはめ込みに法則があるのか、冒険者たちは悩んだ。
 討議すること数十分。
 冒険者たちは、部屋(B)の黒い床が黒い台座、白い床が白い台座に対応していると睨み、「金と銀の戦士像と同じ配置で、台座に金銀の玉を置くのだ」と、結論づけた。
 また、そのためには、金と銀の玉がひとつずつ足りないが、それは、森ですれ違ったグラスランナーが持ち去ったのだろう、と考えた。

【ヒクソス】 あのウサギ持った奴を追うしかない。
【カイン】 問題は、奴がどこに行ったのか、だな。
【ランディ】 あのとき、あのグラスランナーは、どっち方面に去って行きましたっけ?
【GM】 皆さんがやって来た方向に、ですね。
【カイン】 と、すると、メカリアか。
【トルマ】 それはどうかわからんよ。
【ガルド】 とりあえず、この地下遺跡から出ていってる、グラスランナーらしき足跡を追跡するしかないですね。
【トルマ】 勝算はあるの? 追いつくという。
【ガルド】 他に手がかりがないんだから、しょうがないじゃないですか。
【ヒクソス】 メカリアの街に戻る! ダッシュで戻る。通常2時間のところ、15分ぐらいで着くやろ。
【カイン】 そりゃ、生き物じゃねえって(笑)。
【GM】 さすがに15分では無理やけど、とりあえず、メカリアの街に戻ってきましたよ。
 朝早く出発したんで、いまは、昼の2時頃ね。
【ヒクソス】 よっしゃ、ランチ・タ〜イム! 酒場に行くしかないな。
【ランディ】 おいおい。
【ジーナ】 オヤジも見つけてないのに、酒場に戻るのはどうかと……(笑)。
【トルマ】 まあ、とりあえず、これで手詰まりになったのは、確かやな。
【ヒクソス】 いや、だからあのグラスランナーを探すんやって。手がかりは、毛の長いウサギや。
【トルマ】 それだけで探せるか〜?
【ジーナ】 確か、グラスランナーだらけの宿屋があったよね。
【ガルド】 やはり、あれが伏線ですね。行きましょう。
【カイン】 そして、毛の長いウサギを持った奴を探す!
【GM】 しかし、その宿屋には、該当するグラスランナーはおりません。
【ランディ】 その辺のグラスランナーに聞いてみる。
「こういう奴を知らないか」って、人相を説明して。
【GM】 すると、
「そいつなら『つけ髭の材料を捕ってくる』って言って、北の森に出かけたよ」
「それから帰ってきてないけどね」という答えが返ってくる。
【ヒクソス】 ああ〜、ウサギが髭にィ。
【トルマ】 いや、違うやろ。オヤジを連れ去って、オヤジの髭を剃って、つけ髭にするんとちゃうん。
【カイン】 オヤジ誘拐説か!(笑)
【トルマ】 え? だって髭生えとんやろ、ちゃうんか。
【ガルド】 そりゃ、生えてるそうですけど……。
【ミュン】 で、つけ髭して、何するんだろうね。
【カイン】 そりゃ、ドワーフの『ヒゲ自慢コンテスト』にでも、参加するんでしょう。
【ランディ】 じゃ、ドワーフたちが集まってた宿屋に行ってみますか。
【GM】 では、やって来ました。
 ドワーフだらけの酒場に入ると、その中にひとり、いかにも不自然な髭のドワーフが、ニコニコしながら酒をすすっとります。
【ヒクソス】 それ、ゲット!
【GM】 「な、なにをするんだ、ボクはドワーフだよ」
【ヒクソス】 誰もそんなことは聞いてない!(笑)
【トルマ】 つまみ出す。
【GM】 つまみ出された。その子供のようなドワーフは、口を尖らせて、むっちゃ不服そうな顔をしてるよ。
 で、どうすんの?
【トルマ】 「この髭は何か」と、聞く。
【GM】 「髭は髭だよ」と、呆れた目つきで答える。
【カイン】 そりゃそうだ。つけ髭でも、髭は髭だ(笑)。
【トルマ】 「だって、あんた、ドワーフちゃうやろ」
【GM】 「大きなお世話さ」……何がしたいわけ?(笑)
【ヒクソス】 髭だの何だの、関係なかろうが。
【ミュン】 直接、「北の洞窟に行ったか?」って、聞いてみればいいんだよ。
【GM】 「北の洞窟? ああ、寄ったよ」という答えが返ってきた。
【ミュン】 「そこで人を見なかったか?」
【GM】 「さあ、人は見なかったなぁ。お宝なら──おっとと」(笑)
【ジーナ】 「そのお宝、ふたつの玉をよこしてくれ」と言う。
【ミュン】 それより、「貸してくれ」のほうがいいかも。
【ヒクソス】 返すつもりはないけどな。
【GM】 どないやねん!
 その髭のグラスランナーは、「譲ってもいいよ。そのかわり、このつけ髭のこと、黙っててくれるか?」と、聞いてくるよ。
【ガルド】 約束しましょう。
【GM】 「ついでに、明日の髭コンテストで、ボクにひとり1票ずつ入れてくれるか?」
【ランディ】 はいはい、入れてあげよう。
【カイン】 これで7票もゲットしたわけね。下手したら、優勝するかも。
【GM】 じゃあ、髭グラランは、金銀の玉を渡します。
「こんなガラクタ、何に使うの?」
【トルマ】 オヤジを助けるんじゃー。

 冒険者たちは、北の地下遺跡の台座の間まで、戻ってきた。
 そして、部屋(E)の金銀の戦士像と同じ配置で、金銀の玉を台座に置いた。
 すると、台座の部屋にしかけられた装置が作動した。
 入ってきた出入口が、床に吸い込まれるように消えてゆく……。台座の部屋はエレベーター、部屋全体が上昇を始めたのだ!
 しばらくして、先ほどの出入口の正面にあたる壁に、通路への出口が現れた。
 そして、動きが止まった。

【GM】 通路には、瓦礫が堆積しています。ただ、通路の上半分に空間が残ってるので、通れないこともない。
【ジーナ】 ああ、服が汚れる〜。
【GM】 ちなみに、通路の天井は崩れてなくなってますね。それを見ると、どうやらここは、地下の空洞に建築された建物だと思われます。
 ひょっとしたら、台座の部屋の天井裏にも、瓦礫が積もってるかも知れない。
【カイン】 そこにオヤジの死体もあったりして(笑)。
【ガルド】 とりあえず、通路を進んでみましょう。
【GM】 進むにつれて、通路に積もった瓦礫は少なくなっていき、やがて、いままでと同じ、石畳の床と天井の通路になる。
 その通路の突き当たりに、扉があるよ。
【ヒクソス】 開ける。
【GM】 扉の向こうは、小さな部屋。
 そこには、丸くてピカピカして髭が生えてるおじさんがいた。ちょっと足を傷めてるらしい。
【ランディ】 なるほど、中2階のようなここに落ちたから、軽傷ですんだんだな。
【カイン】 「サイレント・パブのオヤジか?」と、尋ねる。
【GM】 「はい、そうです」……と、アヒルのような声で答える。
【ジーナ】 アヒル??
【ミュン】 なぜに(笑)。
【GM】 ……という、キミらの声も、アヒルのようなものに変化します(笑)。
【ランディ】 どうやら、ヘリウムガスが充満してるらしい。
【GM】 現実世界のヘリウムガスと同一のものかどうかは、わからないけどね。キャラクターには、こっち世界の知識はないし。
 オヤジの話によると、コック付きの酒樽のようなものがあったので、喉が乾いたときに、思わずコックをひねってしまったらしい。
 すると、摩訶不思議なガスが噴き出し、それを吸いこんでしまってから、声がおかしくなったとのこと。
 よく見ると、皆がいる部屋は、古代の魔術師の研究室のようです。
【ミュン】 貧弱な頭脳と、低レベルなセージ技能で、ガスの正体を調べてみよう。(ころっ)
【ジーナ】 わたしも。(ころっ)
【GM】 わかるといえば、わかったよーな……。これは、いままでに発見されたことのない、新種のガス。毒性はないらしい。
【カイン】 学のないカインは、そんなこと気にもせず、おっさんを背負って、とっとと帰ろうとする。
【ガルド】 ひょっとしたらこの遺跡、地震でもろくなってるかも知れませんしね。
【ジーナ】 じゃあ、後で魔術師ギルドに、このガスのことを報告しようっと。
「声がかわる変なガスを見つけました」と。
【ヒクソス】 ん、じゃあ、帰った。
【GM】 帰ってきました。
 サイレント・パブのおかみさんは、感謝しまくります。オヤジももちろん、感謝します。
「あなたがたの活躍は、伝説として、後世にまで語り継がれることでしょう。このサイレント・パブがある限り!」
【ランディ】 ……ここって、確か──。
【ミュン】 ──傾きかけの酒場だったよね。
【カイン】 その伝説、3日しかもたんのと違うか(笑)。

 この日、彼らが発見した地下遺跡と謎のガスは、レムリア大陸の歴史を大きく動かすことになる。

 報告者にちなんで『ジーナガス』と名づけられた新種のガスは、オレンブルク王国の魔術師ギルドで研究され、空気より軽い気体だと判明した。
 その後、何代にもわたる研究と試行錯誤の末、ジーナガスの製法が確立され、大陸を蹂躪する天駆ける船が生み出される。

 それは、もはや彼らの名が歴史の彼方に忘れ去られた、遠い遠い未来の物語である。

÷÷ おわり ÷÷
©2000 Hiroyoshi Ryujin
Map ©2002 Moyo
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